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2025年04月28日

第1回:開発初期のハナシ

Lv1.リィンカネの作り方?

和田
こんにちは。
NieR Re[in]carnation(以下、リィンカネ)」シニアシナリオライターの和田です。
シニアシナリオライターっていうのは、なんといいますか......脚本を書くライターの中でも、中途半端に地位が高い雑用係みたいなものなんですが......

それはさておき。
この度、NieRシリーズ15周年の企画の一環として、リィンカネの開発を振り返ってのブログを書くことになりました。いわゆる、「開発者ブログ」といわれるものですね。

では、さっそく今回のゲスト......僕と同じ「NieRシナリオ班」に所属しているシナリオライターの方に登場してもらいましょう。

NieRシナリオ班】
スクウェア・エニックスで2018年から活動している、主にNieRシリーズのシナリオライティングを担当するチーム。NieRシリーズのクリエイティブディレクターであるヨコオタロウ氏の指導のもと、シナリオを書いたり、雑用をこなしたり、振り回されたりしている。

福嶋
いきなり呼ばれてきました。NieRシナリオ班の福嶋です。
あの、これ、なんか真面目な感じの話をしなきゃいけないやつですか?

和田
正直に言うとですね......まだよくわかっていません。

福嶋
呼んだ和田さんがわかってないってどういう事ですか?(笑)

和田
とりあえず、毎回シナリオ・アート・音楽とか何かしらテーマを決めて、開発資料を載せたり開発裏話を話したり......というブログにしたいとは思っています。

福嶋
ふむふむ。

和田
ただ、和田が一人でやろうとすると、論文みたいな堅苦しいブログになりかねないじゃないですか。

福嶋
ああ、和田さんは元システムエンジニアですからね。

和田
だから第一回目に、チームの中でも陽気で明るい福嶋さんをゲストに呼んで、楽しそうな雰囲気のブログにしてもらおうと目論んだわけです。

福嶋
つまり、今回の記事によって、今後のブログの方向性が決まると?

和田
そういうことです。

福嶋
わかりました。お任せあれ!

和田
頼もしい限りです(笑)
福嶋さんと僕の2人は、NieRシナリオ班の設立当初から一緒に仕事をしている"1期生"で、一番付き合い長いですからね......ひとつお願いします。

福嶋
それじゃ、まずはお互いどういう業務を担当しているか、簡単に話しておきましょうよ。

和田
僕はNieRシナリオ班のリーダーをやっていて、シナリオの執筆と監修、ゲームの実装チェック、声優さんの音声収録の立ち合い......だったりと、シナリオに関わること全般をやっています。

福嶋
チーム全体のまとめ役ですよね。

和田
あとは......日々ヨコオさんから降りかかる"理不尽な要求"から、チームのみんなを守ることも大きな仕事のひとつですかね......

福嶋
和田さんはなんでも屋というか、色々大変ですよね......

和田
福嶋さんの方の業務内容はどうでしょう?

福嶋
私は、リィンカネの「少女と怪物の物語」制作時は、『檻(ケージ)』後半7~12章のセリフを書いたり、しばらく休職期間などありつつ、復帰後はママのセリフを書いたりしていました。

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ママは、リィンカネのマスコット的キャラクター。布を被ったオバケのような姿で、物腰柔らかい母親のような喋り方をする

和田
後半7~12章といえば、運送屋のセリフも福嶋さんが書いてましたよね?

福嶋
そうですそうです。運ちゃんっていう呼び方も、『檻(ケージ)』内のセリフを書きながら生まれました。

和田
実は僕の中では、福嶋さんの人柄って運送屋とイコールなんですよ。

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運送屋は、ママに似た姿をしたキャラクター。サラリーマン気質で、徹底的に現実主義

福嶋
えっ!? どのへんが!?

和田
福嶋さんは、普段しっかりした方なんですが、たまに急にはっちゃけたりするじゃないですか。「これぞウィンウィンッ!!!!」とか、リアルで言い出してもおかしくなさそうというか......

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「これぞウィンウィンッ!!!!」は、メインストーリー「少女と怪物の物語」での運送屋のセリフ。画像は開発中のゲーム画面で、グラフィックなどがブラッシュアップ前のもの

福嶋
どちらかというと、ママに似てるって言われるほうがうれしいんですが......

Lv2.ウェポンストーリー修行

和田
自己紹介も済みましたし、ブログの第一回目ということで「リィンカネの開発初期のエピソード」というテーマで話をしていきましょうか。

福嶋
私たちがシナリオ班に入って、ほぼ最初の仕事がリィンカネの企画でしたね~。「ウェポンストーリー」書き直し事件、覚えてます?

和田
ありましたね......当時は毎日、朝みんなが出社してから30分くらいで、集中してウェポンストーリーを1本書きあげる、というのをやっていた時期で。

福嶋
シナリオ班の武者修行的な感じですよね。何も考えずに、がむしゃらに書き溜めていったもんだから、それを見たヨコオさんにNGを食らって......まずは世界観とかの前提を決めなさいということでした。

和田
それでボツになったものもそれなりの数あったような。

福嶋
リィンカネを隅々までしっかり見てくださっているお客様はお気づきかもしれないですが、武器やコスチュームについているフレーバーテキストには、シリーズ毎にテーマが決まっているんですよ! 例えば、こんな表にまとめたりして。

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フレーバーテキストのルール表(※クリックで拡大してご覧ください)

和田
複数人のライターさんがバラバラなものを書いてしまわないように、内容や書式のルールを決めるのはほんと大切です。

福嶋
フレーバーテキストを書く時は、必ずこの資料を見るんですよね。テーマが決まるとライターとしてもありがたいけど、ときには難しいテーマもあったり......

和田
試行錯誤しながらそれなりの数を書いた気がしますが、もう何を書いたか忘れてしまったな......

福嶋
あ。私、和田さんが書いたウェポンストーリーで、印象に残ってるやつあります!

和田
え、どれだろう?

福嶋
グリフの「頑護の銃」だったかな。仲間の兵士たちが、グリフについて話すだけのやつです。

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武器の情報がまとまった管理表の一部。Lv1~Lv4と書かれた列に「頑護の銃」のウェポンストーリーも掲載されている(※クリックで拡大してご覧ください)

和田
よく覚えてますね......

福嶋
リィンカネ開発初期の頃は、他の人が書いた文章とか読み合ったり、何かと相談しあう機会が多かったから、1期生が書いたものは結構印象に残ってますよ。

和田
他にも、初期の思い出って何かありますか?

福嶋
うーん......
あ、私はやってないんですが、和田さんはキャラクターデザインのための参考アート集めしてませんでした?

和田
やってましたね。
キャラクターのデザイン発注のために、「こんなイメージでお願いします」っていう参考画像をあちこちから探しました。僕は高校生の制服の写真をひたすら集めたり......
当時、一緒に画像集めをしていたメンバーがいたんですが、アートセンスが尖りまくった人で。ヨコオさんも「どこからこんなアート見つけてくるの!?」って驚くぐらい、奇抜なアートを拾ってくる達人でした......(笑)

福嶋
その尖ったアートが、きっとキャラクターの初期アイデアに色々反映されてるんでしょうね(笑)

和田
あの奇天烈な画像たちから魅力的なキャラクターを生み出すデザイナーさんは、本当にすごいですよ......

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リィンカネの主人公キャラクターについても様々な姿が検討された。少女と怪物(左)、ファンタジー世界の学生(右)のようなデザインアイデアも存在した

Lv3.合宿という名の檻

和田
あと、開発初期の思い出といえば「合宿」じゃないですか? ヨコオさんとシナリオ班で、都内の旅館に泊まり込んでシナリオを作ったりしましたよね。

福嶋
あー、そんなことあったかも?

和田
まあ、合宿というと楽しそうに聞こえますが......
実際のところ、ヨコオさんからシナリオが全く出てこないので、旅館に閉じ込めて無理やり書いてもらうという企画でしたけど。

福嶋
少女と怪物の物語のメインストーリーは、その合宿で書き始めたんでしたっけ?

和田
そうでしたね。あれ、福嶋さんはあんまり合宿のこと覚えてないですか?

福嶋
うーん、覚えてない。もしかしたら、休職してた期間かもしれない。

和田
福嶋さんはシナリオ班に入ってから、産休・育休をとってますもんね。

福嶋
リアル"ママ"ですから。だから、運送屋じゃないし!

和田
根に持たないでください(笑)
合宿では、和室の大広間にスクリーンとプロジェクターを置いて、PCの画面を映してですね。そこでヨコオさんが、リアルタイムで「少女と怪物の物語」のメインストーリーのあらすじを書いていくような形式でした。それを見ながら僕たちシナリオ班が、あれこれ意見を言って......そして夜になったら、最近遊んだゲームの分析なんかを話しあったりしましたね。懐かしい。

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合宿を経てできあがった、「少女と怪物の物語」のシナリオのあらすじ。この骨子をもとに、キャラクターたちのより詳細な台詞が作られていった

福嶋
"......そう。それはとってもいい機会だったわね。"

和田
......わね?

福嶋
"ママ、感動しちゃう。そういう時代を経て、今があるんだもの......"

和田
急にママ風に喋るのやめてください(笑)
いやでも、これこそ今回福嶋さんを呼んだ意義なのかもしれない......

福嶋
"うふっ。リィンカネをつくっていた頃のお話、もっともっとしたいわ。
ママ、思うのよ。毒にも薬にもならない話をして、誰がブログを読んでくれるっていうの? ママ、みんなにしっかり届けたい。リィンカネ開発の光と闇......そしてヨコオタロウの光と闇を......──"

和田
そんなこと言って、このブログが炎上でもしたらどうするんですか?

福嶋
"平気よ。仮にこのブログが炎上したとしても、怒られるのは和田さんだもの。"

和田
ですよね......

Lv4.リィンカネを想って

和田
さて、開発ブログ「リィンカネの作り方」の第一回目ということで、開発初期の思い出を色々話してみました。

福嶋
こんな内容で本当に大丈夫なんですか?(笑)

和田
どうでしょう......(笑)
でもまあ、ブログを読んでくださったお客様の反応を見つつ内容もアップデートしていけたらなと。とにかく今回に限っては、「リィンカネの開発資料が見れたり、開発裏話が聞けるブログなんだ」......ということだけ、覚えておいていただければと思います。

福嶋
それにしても、サービスが終わってしまったリィンカネの話をまたできるとは思いませんでしたよね。

和田
NieRシリーズ15周年のおかげですよ。シリーズの周年なのに、その3作品目であるリィンカネを遊ぶ手段がないなんて、悔しいですもんね。
ゲームを遊べることの代わりにはならないと思いますが、少しでもお客様にリィンカネを覚えていただく助けになれればいいなーと思います。

福嶋
そうですね!
NieRシリーズ15周年記念としては、このブログだけでなく「スペシャルノベル」のほうも是非読んでほしいです。ちゃんとリィンカネのエピソードも公開されていますから。

和田
はい。そちらも楽しんでいただける話になったと自負しています。

福嶋
ママのモノマネしてたら、久しぶりにママのセリフを書きたくなってきました(笑)
では、私も次回の更新を楽しみにしたいと思います! 読んでくださってる方も、ありがとうございました~。

和田
楽しんでいただけたらいいなと思いながら、ありがとうございました......!
僕たちもまたリィンカネの話ができて嬉しいですし、頑張って更新していこうと思います。

福嶋
ウィンウィン~ッ!!!!

<おわり>