NieR Blog

ALL ENTRIES

2026年01月30日

最終回:ブログのハナシ

Lv1.ブログを振り返って

2025年の4月から始まった、『NieR Re[in]carnation(以下、リィンカネ)』
の開発秘話を語るブログ「リィンカネの作り方」。

その"最終回"をどんな内容で締めくくるべきか、
NieRシナリオ班のリーダー和田は思案に暮れていた。

そんなある日──
彼のデスクに、会議室へ来るよう指示が書かれた"謎のメモ"が置かれていた。
呼び出された理由もわからぬまま、彼は会議室のドアを叩く......

???
入りたまへ。

和田
......失礼します。

???
待ちわびたよ。重要な対談に遅刻するなんて、君も偉くなったようじゃないか。

和田
大変申し訳ありません......って、福嶋さん(ブログ第1回のゲスト)じゃないですか。

福嶋
てへ。バレちゃいましたか。

和田
いや、バレるも何もないですよね。

福嶋
まあまあ、そこに座ってください。

和田
......ところで、どうして僕がここに呼ばれたんですか?

福嶋
それはですね......「リィンカネの作り方」最終回のゲストとして、和田さんにお越しいただいたという趣向なわけです!

和田
ああ、なるほど。

福嶋
和田さんがテーマを決めかねているようだったので、このブログ運営を振り返る回にするのはどうかなと思いまして。

和田
つまり、「リィンカネの作り方」の作り方、というわけですね?

福嶋
よっ! さすが和田さん、うまいこと言う!

和田
なんか、やけにテンション高くないですか?

福嶋
気心知れたシナリオ班の"1期生"同士ですし、打ち上げ的に飲みながらやりましょうよ! 私はもうすでに飲み始めてますよ?

和田
え。そのしゅわしゅわした黄色い飲み物って......まさか?

福嶋
レモンソーダです。

和田
ですよね。

福嶋
勤務時間中なので、もちろんお酒なんて飲みません。はい、和田さんもどうぞ。

和田
じゃあ、いただきます。

福嶋
では......カンパ~イっ!

和田
乾杯。

福嶋
さて。開発者ブログですが、やり切ってみてどうでしたか?

和田
なんというか、血反吐を吐きながら更新してましたね。

福嶋
血反吐って。

和田
でも、通常業務の傍らで更新していたので、思ったより大変だったのは確かです。

福嶋
そうですね。このブログの運営は、主に和田さんと私の2人で回していましたが......

和田
ゲストと対談して、その内容をシナリオ的に構成し直したり。

福嶋
記事に載せる資料を用意して、使用許諾をもらうために各所に連絡したり。

和田
思い返すと、いつも更新日直前までバタバタだった気がします。

福嶋
バタバタでしたし、間に合うのかヒヤヒヤでした(笑)

和田
2人でブログの編集作業をできるように、色々マニュアル化も行いましたよね。

 
b10_lv01_01.jpgブログ記事の執筆のルールをまとめたマニュアル資料の一部

福嶋
このマニュアルにある、「字数3000~4000文字」っていうのは大ウソですよね(笑)

和田
ゲストの方々が興味深い話を次々と出してくださるので、どうしても予定文字数に収めることができなかったんです。なので、僕は悪くないです。

福嶋
珍しく和田さんが言い訳してる。

和田
まあ、増えた文字数だけ、読者の皆さまに楽しんでもらえるような濃い記事になっていたらいいなと思いますね。

福嶋
うん。それはそうですね!

和田
福嶋さんにも、ブログ第1回のゲストとして出てもらって以降、ライターとして記事の作成を手伝ってもらっていました。

福嶋
実はそうなのでした。

和田
毎回記事に関わる立場として、ご自身も話したいことが募っていたのでは?

福嶋
まさに! 最終回で一気に発散しようと思って、今日この場を設けたわけですよ。

和田
そういう思惑でしたか......裏で策略を巡らせる感じ、さすが「運送屋」の担当ライターです。

b10_lv01_02.jpgナビキャラである「運送屋」のセリフは福嶋が担当していた。最終回なのでちょっとニッチな資料を掲載

福嶋
よし、さっそくやっていきましょう! 景気づけにジュース2本め、開けちゃいますね。

和田
では、僕ももらいます。

Lv2.キャラクターのハナシ・改

福嶋
NieRシナリオ班の一員としては、やっぱり「キャラクター」の話がまだまだ語り足りないと思いますね!

和田
第2回の記事「キャラクターのハナシ」のテーマが、まさにその趣旨でしたよね。

福嶋
でも、ゲストの松尾さん、アルゴーの話しかしてないですもん。

和田
いや、別にアルゴーだけってわけじゃ......

b10_lv02_01.jpgブログ第2回の記事を抜粋。みんな冒険家アルゴーの話をしている

福嶋
心からそう言えますか? その記事、「アルゴー」っていう単語を検索しただけで、25箇所もヒットしますよ?

和田
......まあ、あの記事はアルゴー回だったのは認めます。

福嶋
ほらね。もっと他のキャラの話もしたいしたいしたいしたい~!!

和田
わかりましたから......「キャラクターのハナシ・改」として、改めてこの場で語ってみましょうか。

福嶋
よしきたァ!

和田
で、何か準備してきているんですか?

福嶋
実は、まだ一度もお出しできてないキャラ資料がありまして。

和田
もしかして......

福嶋
「太陽と月の物語」の登場キャラの選定用に、開発会社のアプリボットさんが用意してくださったアート達です!

b10_lv02_02.jpg和風世界観のキャラクターのラフアート

和田
ありましたね。こちらは陰陽師と巫女というペアのイメージで描かれたアートです。

福嶋
目に風車が刺さっている子とか、色々物語の想像が膨らみますね~!

和田
「太陽と月の物語」では企画当初から、登場人物を"ぺア"に限定して、必ず"白と黒"で対比させるようルールを設けていたんです。

福嶋
ほうほう。次の天使と悪魔ペアもそうなっていますね。

b10_lv02_03.jpg天使と悪魔がモチーフとなったキャラクターのラフアート

和田
これらのキャラ達の登場は叶わなかったのですが、オミットが悔やまれる素敵なアートばかりですよね。

福嶋
本当ですよね。ちなみに超個人的な意見だと、「天使」は男バージョンで是非お願いします。羽根ありの方で!

和田
言うのが数年遅いですよ......(笑)

福嶋
しゅん......

和田
あとは、同時期にユディルとサラーファのアート選定も行っていましたよね。

福嶋
もちろん、そちらもご用意していますよ。懐かしいな~。

b10_lv02_04.jpgb10_lv02_05.jpgアラビアンナイトをモチーフとしたキャラクター、盗賊ユディルと占い師サラーファのラフアート

和田
そういえば、ユディルとサラーファの最初期は、福嶋さんがキャラクター担当をされていませんでしたっけ?

福嶋
実はそうなんです。ちょうど産休に入ることになって、別のメンバーにバトンタッチしたんです。

和田
当時書いていたプロットがどんな物語だったか、覚えていたりしますか?

福嶋
うーん、もともとユディルは盗賊じゃなくて、「船乗り」という設定でしたね。奴隷船に乗って大海原から砂漠にやってきて......みたいなことを考えていました。

和田
福嶋さんがそのまま書いていたら、どんな物語になっていたのか気になります。

福嶋
あとサラーファは、キャラデザインの方向性が決まったあと、髪の色や装飾の候補をいくつか出していただいたんです。

b10_lv02_06.jpg占い師サラーファの、髪や装飾のパターンが描かれたアート

和田
確か、福嶋さんはピンク色の髪を激推ししていましたよね?

福嶋
そうです! ピンク髪かわいすぎませんか!?

和田
そうですね(笑)
他のキャラにはない特徴ですし、いい差別化にもなったと思います。

福嶋
プロットを担当はできませんでしたが、ちょっとしたこだわりを残せたことで私は満足ですよ......

和田
実はユディルとサラーファのペアは、その後も担当ライターが引き継ぎながら何度か変わっていたりします。

福嶋
私が産休に入ったり、シナリオ班の新メンバーが加入した頃でしたもんね。

和田
僕は歴代のキャラ担当みんなとやりとりしていましたが、ライターさん毎の好みや個性がいい意味で混ざって、キャラとして深みが出たように感じています。

福嶋
ほう......抜かりなく、いい感じに話をまとめようとしてきましたね。はい、ジュースもう1本どうぞ。

和田
......いただきます。

Lv3.ノベルシナリオのハナシ・改

福嶋
キャラクターについて語れて、余は満足じゃ。

和田
それはよかったです。

福嶋
でも、まだまだ語り足りないツ! 次は第8回の記事「ノベルシナリオのハナシ」について色々話しましょう!

和田
NieRシナリオ班の、二階さんとかりん様がゲストの回でしたね。

福嶋
記事の最後にお二人が、お気に入りのノベルシナリオについて話していたじゃないですか?

和田
あの人達は語りだすと止まりませんからね。記事を無事にまとめられるか不安になりながら対談をしていました。

b10_lv03_01.jpgブログ第8回の記事を抜粋。愛ゆえに語りが止まらなくなったゲストのお二人

福嶋
私も、お気に入りシナリオについて話していいですか?

和田
......長くならなければ。

福嶋
まあまあ、和田さんにも関係のあるプロットだと思いますよ?

和田
え、どれのことでしょう?

福嶋
ディミスのシークレットストーリーについてです。

和田
読者の方にもわかるように、簡潔に説明を。

福嶋
機械の兵士ディミスの生まれを描いた物語で、ディミスと王子リオンの名前の関係性がわかるお話ですよ。

b10_lv03_02.jpgディミスのシークレットストーリーのゲーム画面

和田
なるほど。福嶋さんの印象に残っているポイントとしては、2人の名前に関したエピソード部分なんですね。

福嶋
ですね。名前の由来がわかるって胸熱じゃないですか?

和田
実はその名前のくだり、プロットの時点では存在してなかったんです。

福嶋
ほう、詳しく。

和田
当時、他のライターさんに本文の執筆をお願いしていたんですが、もう1エピソード足りないなと感じて、リリース間近に追加した部分なんですよね。

福嶋
つまり追加要素だったってこと!?

和田
刺さる人がいてくれたようなので、ギリギリで追加してよかったです(笑)

福嶋
シナリオとして、グッと締まったと思いますよ。

和田
ありがとうございます。

福嶋
お、もうコップが空きましたか? ささ、もっと飲んで飲んで!

和田
炭酸ジュースばっかり、そんなに飲めませんよ......

福嶋
そんなこと言わず! どんどん飲んで、もっと裏話を暴露しちゃいましょうよ!

和田
いや、ジュースで悪がらみしないでください。

福嶋
最終回だし、いいかなと?

和田
このままだと最終回が空中分解しかねません。他に語っておきたいことはないんですか?

福嶋
では、次は第7回の記事「運営のハナシ」で話題に出た、「外伝ストーリー」について話しましょう!

和田
そうしましょう。

b10_lv03_03.jpgブログ第7回の記事を抜粋。ゲストからのお宝資料として「外伝ストーリー」が登場した

福嶋
といいつつ、「外伝ストーリー」については私も知らないことが多く......まだ出せるネタがあれば和田さんお願いします。無茶ぶりスミマセン。

和田
わかりました。外伝ストーリーは、メインシナリオで登場する敵や脇役にスポットライトを当てる予定でした。こんな資料を作ったりしてましたね。

b10_lv03_04.jpg 外伝ストーリーの登場キャラを検討する資料

福嶋
おお。この資料、見たことなかったです。1番上の「上官」の企画が進んでいたのは知っていたのですが。

和田
はい。上官については、アートの制作まで進んでいたりしました。

b10_lv03_05.jpg 囚人達の「上官」を主人公とした外伝ストーリーのコンセプトアート

福嶋
実現していたらどんな話に仕上がったのでしょうね~。

和田
他にも試作として、「フィオの親友」のプロットやアートもできていたります。

福嶋
フィオの親友だったのに、途中から口をきいてくれなくなったあの子が主人公ですか。

b10_lv03_06.jpgフィオの親友を主人公とした外伝ストーリーのプロット

b10_lv03_07.jpgフィオの親友のラフアート

和田
以上のように、検討は色々行われていたのですが......残念ながら実現には至りませんでした。

福嶋
親友ちゃん、本当はいい子だったんだ......アートもオミットが悔やまれるかわいさ......

和田
最後にこうやってお客様に見ていただける機会を作れたのも、ブログをやった意義な気がしますね。

Lv4.最後に......

福嶋
えーと、まだ飲めますか? レモンソーダ以外にもありますよ。パイナップルソーダとか。

和田
炭酸ジュースはもう大丈夫なんですが......

福嶋
でも話が尽きたら、本当にこのブログが終わっちゃうじゃないですか!

和田
仕方ありません。このブログは、本来なら昨年の12月に終わる予定だったんですから。

福嶋
うう......それなら、いつもの締めの流れですかね。

和田
はい。最後の......読者の皆さまへのコメントですね。

福嶋
はい......
皆さま、今まで「リィンカネの作り方」を読んでくださって、ありがとうございました。「サービスが終わってから開発ブログ?」と思われたかもしれませんが、今だからこそ語れることを盛りだくさんお届けできたと思います。これからも皆さまの記憶の中にリィンカネの世界とキャラクター達が生き続けてくださることを願っています。

和田
NieRシリーズ15周年記念の一環で、開発者ブログを更新することができました。お客様だけでなく、リィンカネの開発陣も、作品に対して愛情や情熱を持って携わっていたことを知ってもらえたらうれしいです。僕はリィンカネのことを一生忘れないので、そういうお客様が1人でも増えてくださることを祈っています。

福嶋
では、これで終わりになりますが......

和田福嶋
皆さま、ありがとうございました!

福嶋
............

和田
........................

福嶋
え。和田さん、もしかして泣いてます?

和田
はい......パイナップルソーダの炭酸が強くて涙が......

福嶋
............

和田
............

福嶋
......すか。

和田
え?

福嶋
これで終わっていいと思ってるんですか!!!!

和田
!?

福嶋
メソメソしてる暇があったら、何か次にできることを考えましょうよ!

和田
別にメソメソはしてないのですが、確かに諦めるのはまだ早いですね。

福嶋
では、今年2026年に何ができるか、今からブレストをしましょう。

和田
そうしましょう。

福嶋
好き勝手なことを言いますが、リィンカネのノベルシナリオを絵本化するのはどうですか!? 豪華声優陣による朗読CD付きで!

和田
本当に好き勝手なことを言い始めましたね。

福嶋
言うだけならタダですから。

和田
ただ、既にリィンカネはサービス終了したゲームなので、グッズを作るような予算は......

福嶋
じゃあ、この「リィンカネの作り方」の拡大版で、ネタバレ生放送をするとか!?

和田
確かに生放送は、リィンカネの公式資料集が発売した時にやれなくて悔しかった覚えはありますが、それも......

福嶋
そういう大き目な企画はもうできないってことですね......

和田
残念ながら......

福嶋
できるとしたら、リィンカネの公式Xでポストするくらいでしょうか?

和田
だと思いますね。

福嶋
それなら......うーーーーーん、思いつかん。何かいいアイデア降りてこい!

和田
そうですね......例えば......

福嶋
お、何か降りてきました?

和田
はい。例えば、「リィンカネの年表上の出来事を、公式Xでポストしていく」というのはどうでしょう?

福嶋
つまり、リィンカネのストーリー上の出来事が起きた日に、それに関連した内容のポストをする......ってこと?

和田
その通りです。年表はリィンカネ公式資料集にも掲載しましたが、載せきれなかった情報もちょっとだけ混ぜられたらいいかもですね。

福嶋
......よさそう。

和田
一応、今年はリィンカネのリリース5周年ですから。ささやかなお祝いとしてSNSを更新するくらいは、やっていければなと。

福嶋
それに、昨年このブログをやってきたことで、お客様からのご好評の声がプロデューサー陣にも届いているらしいですし! いけますよこれ!

和田
......では、企画を通しに行きましょうか。

福嶋
よしきた! そうと決まれば、さっそく横山プロデューサーに直談判しに行きますよッッ......!

和田
え。あ、ちょっと福嶋さん?
............すごい勢いで、会議室を出ていかれました。

えっと......ということで。
もしかしたらもう少しだけ、お客様にリィンカネにまつわるちょっとしたお楽しみをお届けできるかもしれません。

では......1年に満たない期間でしたが、
「リィンカネの作り方」にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

<おわり>

2025年12月26日

第9回:ムービーのハナシ

Lv1.そんなキャラだっけ?

和田
こんにちは。NieRシナリオ班、リーダーの和田です。
『NieR Re[in]carnation(以下、リィンカネ)』の開発についてお届けしてきた本ブログも、ついに第9回となりました。
さっそく、ゲストの方をお呼びしていきましょう。

栗原
こんにちは、株式会社アプリボットの栗原空良といいます。リィンカネでは、メインストーリー開発のリーダーをやっていました。

廣江
NieRシナリオ班の廣江です。僕は「ヒトと世界の物語」のリードシナリオライターを務めていました。よろしくお願いします。

和田
お二人とも、よろしくお願いいたします。

栗原
今回は「ムービー」をテーマに対談をすると伺ってきたのですが、あっていますかね?

和田
そうですね。今回のゲストは、リィンカネの最後のシーズンである「ヒトと世界の物語」の開発を支えてくれたお二人なのですが......

廣江
「ヒトと世界の物語」は、リィンカネの中でも特にゲームとムービーの"連動"が重要だったので、僕達が呼ばれたという認識です。

和田
理解がはやくて助かります。

栗原
そういうことですね。わかりました。

和田
では本題に入る前に、それぞれリィンカネでのお仕事遍歴について聞いていきましょう。まずは廣江さんからいいですかね?

廣江
はい。僕はシナリオ班の"二期生"として加入したので、リィンカネの2つめのシーズンにあたる「太陽と月の物語」の後半くらいから開発に参加しました。

和田
そうでしたね。最初にやった仕事とか覚えていますか?

廣江
たしか......「ロストアーカイブ」の担当だったと思います。

栗原
リィンカネの舞台である『檻(ケージ)』の秘密に触れたフレーバーテキストですね。

b09_lv01_01.jpg「ロストアーカイブ」のテキストがまとめられた資料の一部

廣江
ロストアーカイブがどういった内容を書くフレテキなのか、フォーマットなど、企画っぽいところから考えていました。

和田
それまであまり描かれていなかった『檻(ケージ)』の裏設定に触れられて、プレイヤーさん的にも喜ばれるものになったと思いますね。

廣江
そうだとうれしいです。

和田
では、次は栗原さんお願いします。

栗原
僕は最初のシーズン「少女と怪物の物語」の頃、バトルプランナーとしてイベントバトルを作っていました。

和田
イベントバトルというのは、どのようなバトルを指すのでしょうか?

栗原
例えば、ナビキャラクターである「運送屋」と戦うなどの、メインストーリー上で発生する特殊なバトルを指します。

b09_lv01_02.jpg『檻(ケージ)』の案内役であるキャラクターとバトルする展開があった

廣江
リィンカネ初期の頃から、色々関わられていたんですね。

和田
僕個人の栗原さんへの印象ですが......すごくロジカルなのに、緊急事態になると急にパワー型になってチームを引っ張る、頼れる方だなと思っていました。

栗原
そうですかね?(笑)

廣江
僕も栗原さんのこと、最初はロジカルでクールな方だと思っていたんですが......

和田
ですが......?

廣江
開発中に栗原さんが『檻(ケージ)』のモック映像を見せてくれる度、いつも子供みたいにめちゃくちゃイキイキしながら説明してくれるんです。
僕はその普段とのギャップが大好きで、さすがリィンカネのディレクター松川さんの"右腕"として活躍される方は人間力が違うなぁと、常々思っていましたよね。うんうん。

栗原さんがイキイキしながら見せてくれたモック映像。地形と体験デザインを確認するためのもの

和田栗原
............

廣江
あれ。なんで黙るんですか?

和田
廣江さんて、そんなに他人を褒めるような人だったかなと......?

栗原
もしかして......何か悪いものでも食べました?

廣江
いやいやいや、普段からめっちゃ褒めてますって!

栗原
(笑)
まあ、僕は性格診断的にはロジック寄りなんですが、チームやお客様のことを考えると、感情優位になってついやりきってしまう瞬間があったかもしれないです。

和田
それだけ真剣に開発に打ち込んでいた訳ですね。

栗原
ちなみになんですが......『檻(ケージ)』のモックを作成する時に、アプリボット内ではまずこういった資料を作成していました。

b09_lv01_03.jpg『檻(ケージ)』の体験デザインを検討する際の資料

和田
マップの全体構造やギミックなどがまとめられたものですね。

栗原
実は他にもたくさん画像を持ってきているんですよ(笑)
見ます?(笑)

廣江
ほら、イキイキしてるでしょう?

和田
確かに......でも、実際に栗原さんのパワープレーによって実現したシナリオも数多くありますよね。

廣江
「ヒトと世界の物語」第4章での、「母」とのボスバトル内で発生する、リズムゲームとかリリースギリギリまで対応していただきました。

b09_lv01_04.jpg印象的なボスバトルの体験を作り上げるため、リズムゲーム風の要素が取り入れられた

栗原
その部分も当初の見積もりにない開発だったので、よく完成したなと思いますね。

廣江
そうですね。色々大変でしたが、「ヒトと世界の物語」ではやりたいことを全部やり切れたのかなと思っています。

Lv2.2時間で決めた話

和田
では、今回のテーマである「ムービー」について、深堀りしていきたいと思います。

栗原
「ヒトと世界の物語」はそれまでのシーズンと比べて、ムービーが多かったですよね。

和田
そうなんです。物語冒頭のプロローグにあたる章から、いくつものムービーシーンが制作されました。例えば......

「ヒトと世界の物語」プロローグのムービーシーン。今まで出会うことのなかったキャラクター達が初めて出会い、ストーリーが大きく動き出す

廣江
それまでのメインシナリオでは、物語中盤のターニングポイントや、エンディングでムービーを使うことがほとんどでしたよね。

栗原
はい。なので「ヒトと世界の物語」もそのつもりで考えていたのですが......

和田
クリエイティブディレクターであるヨコオさんが書かれたプロットに、プロローグからムービーを随所に使う指定があったんですよね。

b09_lv02_01.jpg

「ヒトと世界の物語」プロローグのプロット。「★」マークが付けられた個所をムービーにすることが指定されていた

栗原
プロットを貰った時点で、単純にゲームを完成させるだけでも厳しいスケジュールだったので......チーム全体がざわついたのを覚えています(笑)

和田
ムービーを作るとなると、制作会社さんを探すところから始めないといけなかったですからね。

廣江
スケジュールが破綻する可能性が高かったので、まずは栗原さんが「ゲームイベントでなんとか表現できないか?」を検討してくれたんです。

栗原
当時は忙しすぎて、もう記憶がおぼろげですが......(笑)
こんな絵コンテを作ったりしていました。

b09_lv02_02.jpgゲームイベントの表現でシナリオを実現できないかを提案する資料

廣江
ゲーム実装の観点や、マップ上でどんなキャラ配置になるかなど、詳しくシーンの流れが書いてありますね。

和田
絵コンテの段階で、キャラの立ち位置を細かく決めているのには理由があるんですよね?

栗原
はい。プロローグが描かれたマップでは、登場させられるキャラに9体までという上限がありました。

和田
キャラの3Dモデルは精細に作られているぶん、データ容量が大きいですからね......

栗原
リィンカネがスマホ向けゲームであることから、一度に処理できるキャラの上限が決まります。

廣江
アプリボットさんに色々な資料を用意いただいて、キャラの配置や動きに無理がないか検証を繰り返しましたね。

b09_lv02_03.jpgプロローグの舞台となる「広場」を図示したもの。キャラの立ち位置や距離感の検証に使われた

和田
ゲーム的な検証が行われた結果、最終的にはムービーを使うことになりましたよね。

栗原
はい。ゲームイベントでの表現にも限界があることがわかり、後々クオリティチェックの段階で問題が起きることが予想されました。

廣江
それに何より、「ヒトと世界の物語」の開幕として、ムービーを使った方が確実にお客様にインパクトを与えられるというのが理由でしたね。

和田
ムービーを使う方向へ舵を切ったのは、英断だったと今でも思います。

廣江
ただ、ムービーを作ることになった以降は、本当に大変で......(笑)

和田
でしたね......(笑)

栗原
アプリボット側にムービー制作の知見が十分になかったこともあり、ムービー演出用の絵コンテをすぐに用意できなかったんです。

廣江
そこで、このブログの第4回「BGMのハナシ」にも登場した、柳川さんに絵コンテ制作をお願いしました。

和田
柳川さんはもともと映像制作が専門の方で、絵コンテ作成にも快く承諾してくれましたね。

廣江
おかげで依頼から2日ほどで、プロローグ内ムービーの絵コンテを仕上げられたんです。

b09_lv02_04.jpgb09_lv02_05.jpgプロローグのムービー演出用に描かれた絵コンテ

栗原
2日って、今思うとかなり無茶な進行ですよね......(笑)

廣江
ですね......相談事項も多く、絵コンテに登場するキャラを2時間くらいで決めないといけない速度感でした。

和田
プロローグに登場するキャラは、その後の第4章まで引き続き登場することになりますからね。

廣江
結果として、後々のシナリオ的にもハマってよかったと、ほっとしています。

和田
プロローグは計10分弱くらいのゲーム体験なんですが、シナリオ的にも開発的にも濃密な章になったことがわかりますね......

栗原
今振り返ると、ゲームだからこそ作るのがあれだけ大変だったようにも思います。

和田
キャラの立ち位置ひとつとっても、ゲームとムービーで整合性がとれているかなど、細かく制御しないといけないですものね。

栗原
はい。なんとなくですが......あのプロローグは、ひとつの舞台上で複数の役者さんが立ち回る「演劇」をゲームで作り上げたんだな、という感じがします。

廣江
「演劇」という表現は、確かにしっくりきますね。さすがは栗原さん、ロジカルな思考だけでなく、そんな詩的な表現もできるなんて。僕も見習わないとだなぁ。

栗原
そこまで言われると、なんだか比喩したことが恥ずかしくなってきました......(笑)

Lv3.床下に潜むママ

和田
さて、ムービーの企画段階のお話ができたので、その後の工程についても話していきたいと思います。

廣江
どんなことを話せばいいですかね?

栗原
そうですね......僕がゲーム実装側の人間ということもあり、「ムービーとゲームの繋げ方」について話すとかはどうでしょう?

廣江
ムービー自体の制作ウラ話ではないんですね(笑)

和田
是非その話題でいきましょう。「ムービー」というテーマを真正面から語らない感じが、「リィンカネの作り方」っぽくていいと思いました(笑)

廣江
であれば、先ほども話題にあがったキャラの"立ち位置"をどう繋げていたか? という話をしたいと思います。

栗原
わかりやすいように、まずはこちらの映像を観ていただくのがいいですかね。

ゲームとムービーの接続例となるゲームシーン

廣江
プロローグでもキャラ操作パートを随所に入れたかったので、映像の冒頭では魔女サリュを操作していますが......

和田
1分28秒くらいでムービーに切り替わりますね。

栗原
注目してほしいのが、その前1分16秒くらいからのカメラの動きです。

廣江
一度、ママが映るホログラムのスクリーンにカメラが移って、再びサリュへ戻っていることがおわかりいただけるでしょうか。

栗原
自由にキャラを移動できてしまうと、人によってキャラの立ち位置が不定になってしまって、直後のムービーと齟齬が出てしまうんです。

廣江
そこで、カメラを一時的にキャラから外して、適切な位置にキャラを配置し直す......という手法をとりました。

和田
こういった、ゲームとムービーの差を埋める工夫は、至るところに使われていますよね。

廣江
まさに。他にも例えば......プロローグでバトルすることになる謎の敵「地球」が該当します。

突如現れ戦うことになる謎の敵「地球」とのバトルシーン

和田
ムービーで美麗なグラフィックの「地球」が出現した後、そのままゲームでのバトルに突入する流れですね。

栗原
ムービーと比較すると、どうしてもゲーム側の3Dモデルが見劣りしてしまうので、表現を工夫する必要がありました。

和田
「地球」は表面の白黒反転や、ノイズ表現も重なって処理が大変そうですが......

栗原
正直、大変でしたね(笑)
でも、なんとかムービーとそん色ない状態にできたと思っています。

廣江
ちなみに、こちらの画像が「地球」とのバトルの開発中モックです。先ほどのリリース版の方がよりブラッシュアップされていることがわかると思います。

b09_lv03_01.jpg開発中の「地球」とのバトルモック。エフェクトなどの表現がまだ薄かった

和田
......今回の記事ですが、実装が絡む濃いめな話になりそうですね。

栗原
そうかもしれません(笑)

廣江
さて、栗原さんの秀逸で独創的なアイデアによって実現した開発エピソードが他にもあるのですが、僕からお話しさせてもらってもよろしいでしょうか。

和田栗原
............

廣江
だから、なんで黙るんですか?

栗原
いえ、やけに僕を持ち上げようとしてくれるなと......

和田
何か企んでます......?

廣江
いやいやいや、ただ記事を面白くしたい一心でネタを出しているだけですって!

和田
まあ......面白いエピソードは大歓迎なので、お願いします。

廣江
では、先ほどのゲーム映像にも映っていましたが、ムービー中の「ホログラムのママ」をゲームで実現するための工夫についてお話ししたいなと。

栗原
ホログラムのママというのは、このシーンに映っていたものですね?

ホログラムのスクリーンに映し出されるママ。これをゲームで実現するための裏エピソードとは......?

和田
この表現も、何かしらの工夫のうえに成り立っているということでしょうか?

栗原
実は、キャラ達が立っている広場の床の下に、ママを隠して配置していまして......

廣江
そのママのモデルを、カメラで映してスクリーンに反映していたという訳なんです。

和田
ママ......そんな近くにいたとは。

栗原
想像すると、ちょっと面白いですよね(笑)

廣江
ゲームに存在しない機能を、ちょっとした工夫で実現した一例ですね。

和田
さて、色々お話を聞いてきましたが......ゲームの開発は、一見地味に思える工夫の積み重ねであるように思えました。

栗原
実際、そうかもしれません。

廣江
地味に見えても、実際には機能開発が必要でコストがかかっているものもありますよね。

栗原
もちろんあります。「ヒトと世界の物語」は開発期間にあまり余裕がなかったので、"その場限りの実装"と割り切って作ることで、開発スピードをあげるこもとありました。

和田
そこでも、栗原さんのパワープレーが発揮されていた訳ですね。

廣江
場所によっては歪な仕組みになっていたとしても、そのおかげでリィンカネを最終章まで届けられたのだと感じますね。

Lv4.謝りたかったんです

和田
今回は「ムービー」というテーマで色々話してきましたが......

栗原
なんと言うか、色々な障害を乗り越えて「ヒトと世界の物語」が完成したという実感がわきました(笑)

廣江
本当にそうですね(笑)

和田
栗原さん達アプリボットの皆さんはもちろん、僕達シナリオ班内でも、常にアイデア出しをしたり、相談したりして一丸となって動けていたと思います。

栗原
そうですね。

廣江
今回の記事はコアな内容が多くなりそうなので、最後は軽い感じで、思い入れのあるムービーの話とかをするのはどうですか?

和田
いいですね。では、まずは廣江さんから行ってみましょうか。

廣江
僕が気に入っているのは、「ママの部屋」の扉から出て、ヨルハ機体の10Hが初登場するムービーへ繋がる一連の流れですね。

「ヒトと世界の物語」の佳境。リィンカネの秘密が明かされたシーン

和田
「NieR:Automata」とリィンカネの繋がりが明らかになり、SNSでも反響のあったシーンですね。

廣江
それに、リィンカネ初期からずっと謎の場所だった「ママの部屋」から外へ出る演出はずっとやりたいと思っていたので。実現できて感慨深かったです。

和田
では次、栗原さんはいかがでしょう?

栗原
そうですね......僕の方は、リィンカネのキャラ達が、『檻(ケージ)』から「地球」へ向かった際のムービーですね。

リィンカネの最終章へ繋がるムービーシーン(制作途中のもの)。いざ降り立った地球には、美しくも不思議な光景が広がっていた

和田
印象的なシーンでしたね。プレイヤーの皆さまが想像する「地球」とは、まったく異なる光景だったのではないでしょうか。

栗原
短いムービーではあるのですが......開発的にもシナリオ的にも「ようやくここまで来たな」という感覚がありました。

和田
同感です。ちなみに、ムービーに映っている"鉄塔"のような構造物は、当時のラフ絵も残っていますよ。

b09_lv04_01.jpgヨコオさん自らイメージを描いた、"鉄塔"のラフスケッチ

廣江
そのムービーはリィンカネの物語全体で一本筋が通ったと感じられる重要なムービーなんです。それを選ぶなんて栗原さんお目が高いですよね。いや、あっぱれ。

和田栗原
............

栗原
やっぱり、廣江さん今日ちょっと変じゃありません? 異様に僕を持ち上げてくれているというか......

和田
ですね......さすがに褒め方に無理が出てきましたし。

廣江
......もう最後っぽいので言っちゃいますが、今日の対談はとにかく栗原さんをアゲていこうと決めていたんですよ。

和田
それは何故?

廣江
これまでお話しした通り、「ヒトと世界の物語」の開発では栗原さんに無理をお願いすることが多くて、迷惑かけまくりだったので......

和田
つまり、廣江さんなりの罪滅ぼしのようなものだったと。

栗原
なるほど、そういうことだったんですね。

廣江
はい。この場を借りて、謝らせてください......!

栗原
いえいえ。では僕からもお返しで言っておきたいのですが......僕から見る廣江さんは、とにかく"本気で作りたい人"という印象でしたよ。

廣江
え......

栗原
本当に「ヒトと世界の物語」は実現困難なことの連続でした。僕が開発的に「難しい」と言う度に、諦めることなく実装を意識した代替案を出してくれていましたよね。

廣江
............

和田
それに廣江さんは、ゲームにも映画にも詳しいので。シナリオを実現させるためのアイデアを豊富に出してくれて、僕としてもいつも助かっています。

廣江
......まあ、ですよね(笑)
僕が天才ってこと、バレちゃってましたか。

和田
(笑)

栗原
そうそう、廣江さんはそうでないと(笑)

和田
廣江さんが本性を現したところで、対談を締めていきましょう。

栗原
はい。

和田
それでは、お二人から読者の皆さんへのコメントをお願いします。

栗原
このブログももう第9回ということで、今回も読者の皆さんが知らない話を色々とお伝えできていたらうれしいです。
開発期間中の苦労した記憶は失われつつありますが、皆さんのリィンカネでの楽しい想い出は、どうか忘れないでほしいなと思っています。僕達の開発話を聞きたくなったら、またいつでも呼んでください!(笑)

廣江
開発期間中にアプリボットの皆様にご迷惑をおかけしたので、せめてこの場では栗原さんに気持ちよく過ごしていただきたいと思ってお話しさせていただきましたが......もちろんお客様があってこそのリィンカネでしたので、皆さんにもこのブログを読んで少しでも楽しんでいただけていたらうれしいです! ありがとうございました!

和田
改めて、お二人ともありがとうございました。

栗原廣江
ありがとうございました。

和田
ということで......NieRシリーズ15周年記念の一環で、「リィンカネの作り方」を更新してきましたが.....

廣江
そういえばこのブログ、2025年内に毎月更新って言ってましたよね。

栗原
ということは、12月の今月が最後になるんですか?

和田
それがですね、実は来年1月にあと1回だけ記事を更新しようと思っています。

廣江
なるほど。つまり、それが"最終回"になるわけですね。

和田
はい。開発者ブログをやってみた感想など、ゆる~い話をしながら「リィンカネの作り方」を締めくくりたいなと。

栗原
更新、応援しています。

和田
ありがとうございます。
どうか読者の皆さまにも、どうかお付き合いいただきたく思います。
それでは、最終回でまたお会いしましょう!

<おわり>

2025年11月28日

第8回:ノベルシナリオのハナシ

Lv1.人選ミス?

和田
当ブログを読んでいただきありがとうございます。
NieRシナリオ班のリーダー和田です。今回も『NieR Re[in]carnation(以下、リィンカネ)』の開発トークをしていきたいと思います。
さっそく、ゲストとしてお呼びしたお二人を紹介していきましょう。


皆さんこんにちは。一 二階(にのまえ にかい)といいます。
私はフリーランスでシナリオの仕事をしていまして、NieRシナリオ班にもフリーのライターという立場で所属させてもらっています。

原田
どうも。原田香林です。シナリオライターです。

和田
お二人ともよろしくお願いします。では、肝心の本日のテーマですが......

原田
ところで、和田さん。この記事で私の名前はなんて出るんですか?

和田
......え? 普段通りなら苗字で「原田」って書くと思いますけど?

原田
「かりん様」でお願いします。

和田
......え?

原田
え?

和田
いや、いきなり話者表記の注文が来るとは思わなかったので......まあ、いいでしょう。

かりん様
やったー。

和田
それなら一 二階さんにも、記事での呼び方の要望があれば聞いておきましょうか?

二階
では、私は「二階」でお願いします。若気の至りで変わったペンネームを名乗っているのですが、何故か誰も名字で呼んでくれず、いつも「二階」と呼ばれているので(笑)

和田
わかりました。二階さんとかりん様、改めてよろしくお願いします。

二階かりん様
よろしくお願いします。

和田
気を取り直しまして......今回のブログテーマは「ノベルシナリオ」でやっていきたいと思います。

二階
ノベルシナリオというと、「イベントストーリー」や「真暗ノ記憶」を始めとした、小説形式のシナリオのことですね。参考に動画を出しておきます。

兵長グリフのノベルシナリオ「真暗ノ記憶」のゲーム映像

和田
ありがとうございます。今回のゲストであるお二人は、特にノベルシナリオに深く関わってもらったライターということでお呼びしました。

かりん様
リィンカネのノベルシナリオ、いいですよね。キャラクターの朗読も相まって、全身でそのキャラの心情を浴びられた気分になりますから。

二階
ライター側も、それぞれのキャラと深く向き合うことを求められるお仕事ですよね。

かりん様
で、主にどういうことを語ればいいんですか?

和田
そうですね、手始めにノベルシナリオの"成り立ち"から話していくのはどうでしょう?

かりん様
............

二階
えっと......

和田
あれ? 二人ともどうかしました?

かりん様
だって、ウチらNieRシナリオ班の"二期生"として入ったので。

二階
ノベルシナリオが最初にどう企画されて生まれたのか、詳細を知らないんですよね。

和田
そうでした......"二期生"のみんなは、リィンカネの『太陽と月の物語』の後半くらいの時期からチームに入ってくれたんでしたね。

かりん様
和田さん、もしかしてゲストの人選ミスじゃないの?

和田
むむ......企画当時のことを知っているのは僕しかいないようなので、このまま話してしまいますね......

二階
お願いします。

和田
この開発者ブログでも度々触れられてきましたが、3Dマップの『檻(ケージ)』を舞台に展開されるメインシナリオは、開発コストが非常に大きいんです。

二階
そんなメインシナリオと同時並行で、他のシナリオコンテンツも用意しないといけないとなると......開発が大変そうですね。

和田
まさに。キャラの魅力をしっかり描きつつ、かつ、コストの高い3D背景を作らない方針で「ノベルシナリオ」が生まれました。

かりん様
リィンカネには、さっき例で出てた軍人や戦争をテーマにした世界もあれば......

二階
SF的な超未来世界など、異なる世界観のシナリオも登場していましたよね。

SF世界観のキャラクターF66xの、「真暗ノ記憶」のゲーム映像

和田
本当に様々な世界観が混在していました。

二階
だからこそ、コスト面で3Dでは表現できないロケーションや展開があっても、ノベルという形式ならば実現できたという訳ですね。

和田
そうですね。例えば、『太陽と月の物語』の主人公である陽那や佑月の「真暗ノ記憶」で描いた世界観は、ノベルシナリオがなければ実現していなかったと思います。

二階
NieRシリーズのコアファンの方々にとっては聞き馴染みのある、『レギオン』や『白塩化症候群』の世界がリィンカネで読めるとは思いませんでしたよね。

佑月の異分岐世界の物語が描かれる「真暗ノ記憶」のゲーム映像

b08_lv01_01.jpg 佑月は本来"高校生"であるキャラだが、異分岐世界では軍人として登場した

かりん様
いやほんと、そう。

和田
あの......かりん様? 一応、この対談が記事になるので、言葉遣いはしっかりしてくださいね?

かりん様
すみません。つい(笑)

和田
まあ、かりん様は普段から敬語が苦手で、NieRシリーズの重鎮である齊藤プロデューサーやヨコオさんに対してもタメ口が出てしまうので......

二階
(笑)
私も対談には慣れていないので、一緒に敬語を頑張って乗り切りましょうね!

かりん様
はーい。

和田
さすが大人な対応......二階さんは、普段の働きやシナリオ面でも本当に頼りになる方で助かっています......

二階
とんでもないです(笑)

和田
さて、今回の対談を無事に終えられるのかいささか不安になりましたが......とにかく本題に入っていきましょう。

Lv2.面白ポイント

かりん様
振り返ってみると、リィンカネにはいろんな形式のノベルシナリオがありましたよね。

二階
そうですね。ちょっと簡単に表でまとめてみましょうか。

b08_lv02_01.jpgリィンカネにおけるノベルシナリオの一覧

和田
どれも地の文が主体のノベルシナリオですが、語るテーマや文字数を変えて、少しずつ違いを出していたんです。

かりん様
イベントストーリーとかは、キャラの深堀りをどこまでしていいのか書く度に迷ってましたね。

二階
難しいですよね。イベントストーリーはゲームの進行状況に関わらずプレイできるので、メインシナリオのネタバレをしないよう気を付けたり......

和田
サービスが続いて、イベントが開催され続ける限りシナリオを考えることになるので、具体的な時系列がわかる事件を描きにくかったり。

かりん様
制約は多かったけど、逆に制約がなければ生まれなかったシナリオもたくさんある気がします。

SF世界観のキャラクター063yの、「イベントストーリー」のゲーム映像

和田
一覧表に戻りますが、「文字数の目安」も気にしてプレイされる方は少なそうですね。

二階
かなりキャラクター性に切り込んだ内容の「真暗ノ記憶」や「虚光ノ想憶」も、ノベルとしての文字数は意外とコンパクトなんです。

かりん様
4話で6000文字だと物足りないので、10000文字とか書きたかったです。

二階
ライター目線だと、もっと書きたくなっちゃいますよね(笑)

和田
ただ、文字数が多くなればなるほど、朗読ボイスを収録する費用が増えたり......

二階
海外版へのローカライズ費用が増えたりするので、文字数はしっかり守って書かないといけません。

かりん様
そこら辺、考えること多くて難しいんですよね。

和田
そして何より、リィンカネはノベルシナリオだけのゲームではないので。長文のシナリオを読むことを退屈に感じるお客様もいることを念頭に、文字数の設計は慎重に行いましたね。

かりん様
なるほどね。......で、和田さん。

和田
なんでしょう?

かりん様
今、手元のノートPCでグリフの「虚光ノ想憶」の文字数を数えてみたんだけど、普通に8000文字近くありますよ?

兵長グリフの「虚光ノ想憶」のゲーム映像

和田
ああ......「虚光ノ想憶」はサービス後半でリリースされたシナリオなので、少し文字数の制限を緩くしたりしています......

二階
その頃になると、長文のノベルシナリオに慣れているお客様の割合も増えていそうですしね。

かりん様
あと、「虚光ノ想憶」はキャラにとっても超重要なシナリオなので、どうしてもプロットの内容が増えがちですよね。

和田
それは間違いないですね。

二階
それなら、次はプロットを見ながら開発トークをしてみませんか?

和田
そうしましょうか。では、かりん様に話題になりそうなプロットを選んでもらって......

かりん様
実は、そう来るかと思ってもうプロットを準備してました。

和田
お、準備がいいですね。

かりん様
............

二階
したり顔でピースしてても、黙っていたら記事ではわからないですよ(笑)

かりん様
はーい。それじゃ、こちらのプロットを見てください。

b08_lv02_02.jpg

少年兵ラルスのシナリオの骨子となるプロット

和田
ありがとうございます。これは......少年兵ラルスの「シークレットストーリー」のプロットですね。

かりん様
そうです。私がシナリオ班に入って初めて書いた思い出のプロットです。

二階
ノベルシナリオのプロットは、NieRシリーズでお馴染みの「ウェポンストーリー」に倣って、Lv1〜Lv4という起承転結の構成で書かれています。

和田
すみませんが、リィンカネの公式資料集で本文も読むことができるので、念のためオチとなるLv4は隠して掲載しようと思います。

かりん様
それぞれのLvに★マークがついている行がありますよね。これは「面白ポイント」と呼んでいて、ノベルシナリオのプロット特有のルールなんです。

和田
プロットのLv毎に、読み手が面白いと思ったり、心が動くポイントを必ず1個以上入れましょうというルールですね。

二階
このプロットの場合だと「ラルスがある目的のため故郷の街へ向かう」という、話的にはよくある導入ですが......

かりん様
街への道中を、"ひまわりが咲きほこる廃線路"というロケーションにしました。

和田
その情景だけでも、読み手の印象に残りそうですよね。

かりん様
それに、その場所がラルスの心情や物語とリンクして、よりドラマチックなシーンになったんじゃないかなと思っています。

b08_lv02_03.jpg少年兵ラルスのシークレットストーリーに添えられたスチルアート。廃線路の周辺に咲き誇るひまわりが印象的

和田
そうですね。「面白ポイント」には、物語的に面白い展開だけでなく、美しい情景描写など、根源的に人の心を動かす要素が書かれるという訳ですね。

かりん様
ひまわりを見た時に、ラルスを思い出してくれるお客様が増えてくれることを願って書きました。

二階
今かりん様が言ったような、「面白ポイント」がシナリオにどう寄与するか? 実際に読み手の心を動かすか? は、プロットの"監修"時にもしっかりチェックしていましたね。

Lv3.監修にはドラマがある

和田
"監修"というワードが出たところで、ここからは監修にまつわる話をするのがいいと思いました。

二階
そうしましょうか。ノベルシナリオが完成するまでに、様々な工程があるのですが......

①担当者がプロットを作成。
②監修者による監修。
③フィードバック修正。
④ヨコオさんによる監修。
⑤フィードバック修正。
⑥担当者がシナリオテキストを作成。
⑦監修者による監修。
⑧フィードバック修正。
⑨ヨコオさんによる監修。
⑩ゲームへの実装工程へ......

かりん様
テキストが完成するまでだけで、工程多すぎでしょ!

二階
まあまあ......(笑)
今話した通り、次の工程へ進む前に必ず"監修"というターンが入るんですよね。

和田
ノベルテキストの監修は、主に僕と二階さんの体制で手分けして行っていました。

二階
個人的にですが、監修とはお客様に出す前に"試食をする係"だと思っています。どんな味付けなら作品やキャラクターが引き立つかを考えつつ、担当ライターさんに修正などをお願いしていましたね。

かりん様
二階さんは、監修のフィードバックと合わせて長めに「ここが面白かったよ」って感想もくれるので、それがすごくうれしかったです。

二階
それは単純に、私がライター側の時に感想をもらえるとうれしいからですね。だから、逆に監修をする時はできる限り感想を添えるようにしていました。

かりん様
おかげでモチベーション爆上がりでした。逆に和田さんは、淡々としたフィードバックで、全然褒めてくれませんよね。

和田
まあ、そうかもですね......褒めの安売りはしない主義なので。

二階
監修スタイルも人それぞれですね(笑)

かりん様
和田さんのフィードバックも正論なんだけど......前に、私のプロットを監修でボツにしたことは今も根に持ってますからね。

和田
あー......それって、フィオの虚光ノ想憶のことですか?

かりん様
それです。

二階
どんなお話だったんですか?

かりん様
実は、フィオの虚光ノ想憶で一番初めに書いたプロットは、フィオの"お母さん"が主人公のお話にしてました。これですこれ。

b08_lv03_01.jpg

『少女と怪物の物語』の主人公であるフィオの「虚光ノ想憶」の初期プロット。ボツになったもの

和田
覚えてますよ。物語の構造的な課題とか、目標の文字数に対して情報が多くなりすぎる、みたいな話をしていたと思います。

かりん様
それでも諦めきれなくて、無理言ってヨコオさん監修に出させてもらったんだけど、結局ボツになりました......

二階
ライター業では、そういうことも多々ありますね。初めに書きたかった話がボツになって、新しく書きたい話を見つけることの繰り返しです。

かりん様
はい......なので、もちろん完成版もすごく気に入ってます。ブログを読んでくれている皆さんも、よければ資料集などでご覧ください......!

b08_lv03_02.jpg

フィオの「虚光ノ想憶」の最終的なプロット

和田
さて、何気に和田との監修エピソードになってしまったので......二階さんとの監修エピソードもお願いできればと思います。

かりん様
うーん、色々あって何のことを話そうかなあ......

二階
例えばそうですね......ラルスの「虚光ノ想憶」の話とか?

かりん様
あー、めっちゃいいですね。そのことを話しましょう。えっと、最初ラルスのお話はレプリカントの「少年ニーア」寄りの暗い話として書いていたんですけど。なんか、敵に捕まったり闇落ちしたりね......でも二階さんに、「もう少し少年漫画の主人公寄りの方がいい」と言われて、方向転換しました。それでそれで......

和田
あの、対談にも一応リズムというものがありまして、あまり喋りす......

二階
あったね~! 最初に見せてもらったプロットは、ラルスが何度も挫折したり、紆余曲折がもっとあったんだよね。それも面白かったんだけど、ラルスには対のペアとなるキャラクターとして「グリフ」がいるから。この質感の暗さはグリフ担当だろうということで(笑) 対比となるようラルスの方はもう少し希望だったり、王道的な要素を強めに入れてみるのはどうだろうと提案したんだよね。

かりん様
そうそうそう。ラルスは絶望的な状態に置かれているけど、人に恵まれているというか、本人の周りに希望が散らばっている感じ。結果、未来のある道を選べたような。だから、監修通りに調整してよかったと思います。この辺りは難しいところですけど、お客様の持っているラルス像もひとつじゃなくて、色々な思いや考えがあるし――


――それから30分後。


二階
そういえば、あのプロットのフィードバックの時、最初どう伝えようか迷って、私変なこと言ったんだけど、覚えてるかな?(笑)

かりん様
めっちゃ覚えてます(笑)
いきなり「ちょっといいですか?」って二階さんに会議室に呼び出されて、ビクビクしながら行ったら、「このプロットはちょっとエロティックすぎる」と言われて(笑)

二階
(笑)
ほら、初期のプロットはラルスが敵に捕まって闇落ちしたりしてたじゃない? 性的なシーンがある訳ではないんだけど、書き手が想定していないようなエロティックなニュアンスが出てしまいそうだと思って......

かりん様
いやでも実はその言葉で、二階さんのフィードバックの方向性がすごい伝わって。

二階
かりん様ならくみ取ってくれると思ってた(笑)

和田
............

かりん様
あ、忘れてたけど和田さん。あんまり開発者ブログっぽくないワードとかでちゃいましたけど、いいよね。

和田
......え、はい。
なんか、二人とも何かのスイッチが入ってしまったようだったので、別の仕事をしていました。

二階
和田さんも、ついてきてくださいよ。作品について語り合うのは、監修の仕事のうちですよ?

和田
努力します......

b08_lv03_03.jpg

かりん様と二階さんのやりとりの末に完成した、ラルスの「虚光ノ想憶」の最終的なプロット

Lv4.お気に入りの物語

和田
さて......お二人のシナリオ愛の一片が伝わったところで、そろそろ対談も締めの時間となりました。

かりん様
まだ話し足りないので、最後に各々のお気に入りノベルシナリオを紹介するのはどうですか?

二階
いいですね。でも、これ以上対談を長引かせると和田さんが困ってしまいそうなので、手短に(笑)

かりん様
はーい。

和田
仕方ないですね......これが最後ですよ。

二階
ではさくさくといきましょう。私は、063yとF66xのシークレットストーリーが気に入っていますね。

b08_lv04_01.jpgb08_lv04_02.jpg063yとF66xの「シークレットストーリー」画面

和田
そのお話ですが、キャラ設定にかなり踏み込んだ内容ではなかったでしたっけ?

二階
はい。シークレットストーリーが実装された時期もサービス中盤以降だったこともあり、彼らが「クローン」であるというネタバレをある程度気にせず、よりキャラを深堀りするシナリオに挑戦できました。

かりん様
それに、それまでの063yとF66xのキャラ性とは違う描き方をしていましたよね?

二階
そうですね。基本のキャラ性として、063yは"頼れる父親"、F66xは"優しい母親"なので、シークレットストーリーではそこを反転させてみたんです。

かりん様
確かにそうでした。

二階
いろんなクローンがいるのなら、二人も普段とは異なる面を無理なく見せられるのでは......という狙いがありましたね。

和田
二階さんはライターとして経歴も長くベテランなので、そういう難易度の高いシナリオも安心してお任せできる安心感がありました。

二階
そう言ってもらえるとありがたいですね(笑)

かりん様
じゃあ、次は私の番で......『ヒトと世界の物語』のエンディングで、少女フィオの独白がノベルで描かれるシーンがお気に入りです。

『ヒトと世界の物語』のエンディングで描かれたノベルシナリオ

和田
そのシーンが挙がるとは、意外でしたね。

かりん様
物語のクライマックスで孤独な世界に閉じ込められたフィオが、自分の大切なものを思い出して前を向く......という内容のノベルです。

二階
そのノベルですが、ラストバトル直後ということも相まって、ストーリーの緩急というかメリハリが生まれてよかったと思いますよ。

かりん様
ですよね。このノベルは、「リィンカネが終わったとしても、リィンカネのキャラはどんな時もプレイヤーさん達の傍にいる」という希望を、フィオの独白を通して表現できればいいなと思って書きました。

二階
その気持ち、お客様にも届いているといいですね。

和田
かりん様は、チーム内でも特に多くのノベルシナリオを書いてくれましたよね。その実績から、リィンカネの公式資料集や15周年記念の「スペシャルノベル」では、執筆だけでなく監修も手伝ってもらいました。チームに入ったときは新人ライターでしたが、素晴らしい成長だったと思いますね。

かりん様
............

和田
......あれ、聞いてました?

かりん様
え? 何か言いました?

二階
どうやら、デスクに置いてある"ぬいぐるみ"の角度を直していて、聞いていなかったみたいです(笑)

かりん様
ごめんごめんごめん(笑)
自分の喋る番が終わったので別のことしてました。

和田
もう二度と、かりん様を褒めたりしないと心に誓いました......

かりん様
えー、褒めてくださいよ。代わりに和田さんにもお気に入りシナリオ聞いてあげるから。

和田
......うーん、お気に入りと言われるとどれを話そうか迷いますね。

かりん様
和田さんは、陽那の「真暗ノ記憶」をあげるかと思ってました。

和田
それは何故?

かりん様
だって、なんか文章がノリノリでしたよね?

陽那の異分岐の物語が描かれる「真暗ノ記憶」のゲーム映像

b08_lv04_03.jpg異分岐世界では、陽那は軍人として登場した

和田
まあ......陽那の「真暗ノ記憶」の物語の"オチ"は、高校生の陽那というキャラクターが生まれた時に既にイメージがあったものでしたからね。いや、本来の高校生としての陽那というキャラクターと、真暗ストーリーで軍人となった陽那は一見別人みたいに見えるかもしれませんが、本質的に人格の部分はあまり変わらないんじゃないかなと思っていたり......って、つい乗せられて語ってしまいました......

二階
和田さんも、作品語りしちゃいましたね(笑)

かりん様
じゃ、みんな話したいことは話せたと思うので、対談も締めですかね。

和田
はい。でもその前に、もうひとつ大切なことをお話したいと思います。

二階
今回ノベルシナリオについて、NieRシナリオ班を中心にお話ししてきましたが......実際には、プロットやテキスト執筆に関わってくださったシナリオライターさん達が他にもいらっしゃるんです。

和田
アプリボットの栗原寬樹さん。
エッジワークスの蔦町未明さん。
シナリオ工房 月光の高崎とおるさん。
そして、フリーでご活躍されている保坂歩さん......

和田二階かりん様
本当にお世話になりました!

二階
私達シナリオ班がどれだけ助けられたことか、感謝してもしきれません。

かりん様
皆さんがいてくださったおかげで、ノベルシナリオをしっかりお客様へ届けられたと思います。

和田
重ね重ねありがとうございました。
では、本当にこれが最後で......お二人からもブログ読者の皆さまに一言お願いします。

二階
こんな風にリィンカネのことを話せる場をいただけて、大変ありがたい&嬉しかったです! これもリィンカネを愛してくださるお客様がいるからこそです。本当に、本当にありがとうございました。
じゃあ次、かりん様お願いします。

かりん様
やっぱりまだリィンカネの話したいんですけど、ダメですか? さっきラルスの話をしたので、ひとまず次はグリフの話をしましょ......

和田
次の機会があればお願いします......(笑)
では、ありがとうございました。次回更新をお楽しみに。

<おわり>

2025年10月31日

第7回:運営のハナシ

Lv1.ソシャゲ運営の布石

和田
こんにちは。NieRシナリオ班のリーダーをしています、和田です。
今回はゲストとして、『NieR Re[in]carnation(以下、リィンカネ)』のプロデューサー陣にお越しいただきました。

及川
株式会社アプリボットの及川です。リィンカネでは運営プロデューサーを務めていました。

横山
リィンカネのプロデューサーをしていました、スクウェア・エニックスの横山です。

和田
今回は、リィンカネの運営やプロモーションについて色々話せたらと思います。お二人ともよろしくお願いします。

及川横山
よろしくお願いします。

和田
横山さんと僕は、今も社内で毎日のように顔を合わせていますが......及川さんとお会いするのは久しぶりですね。もう少し自己紹介を伺ってもいいでしょうか?

及川
そうですね......僕は「囲碁」が特技で、ずっと白黒の世界で生きてきたんです。なので、リィンカネは自分にとても合っているなと思いながら関わっていました(笑)

和田
リィンカネのビジュアルは、彩度が低いですからね(笑)

横山
ズルいなぁ、そんなキャッチーな自己紹介、僕は思いつきませんよ(笑)

b07_lv01_01.jpgリィンカネのリリース記念ガチャで用意されたプロモーション資材。コスチュームも白と黒

和田
次は横山さんにもお話を伺っていきましょう。
横山さんは、NieRシリーズの始まりである『NieR Replicant/Gestalt』の立ち上げから関わられていましたよね?

横山
そうですね。当時は予算もなくて、その時のスクエニ側スタッフは、NieRシリーズプロデューサーである齊藤さんと僕だけでした。

和田
リィンカネでも立ち上げ時から関わっていたとお聞きしているので、流れでお話伺ってもいいでしょうか?

横山
もちろんです。今日はリィンカネの正式プロジェクト化前の企画書を持って来たんですが......最初期案ではかなりライトなゲームでした。

b07_lv01_02.jpgb07_lv01_03.jpgリィンカネの最初期の企画書(抜粋)。実際のリィンカネのゲーム体験とは方向性が異なるものだった

及川
おお。この企画書は、僕やディレクターの松川が関わるより前のものですね?

横山
はい。そこから「NieRなのだからストーリーがあるのは必須だよね」となり、ヨコオさんにもより深く関わっていただく方向で詰めていきました。

b07_lv01_04.jpgゲームの内容を詰めている段階の企画書(抜粋)。最終的なリィンカネの原型となっている

和田
よりシナリオを中心に据えた作品へと変化していったわけですね。貴重な資料をありがとうございます。

横山
読者の方に喜んでもらえたら幸いです。僕から出せるお宝資料はあまりないので(笑)

和田
まだまだ期待させていただきます(笑)
では、そろそろ今回のブログの本題である「運営」について深堀りしていきたいのですが......

横山
そもそも、"ソーシャルゲームの運営"という仕事がどんなものなのか、簡単に説明しておきましょうか。

及川
では僕から。お客様に見えやすい部分で例をあげると、ゲーム内で開催されるイベントやキャンペーンなどを企画したりしていました。

横山
そして、それらを「お客様へ向けてどうプロモーションするか?」を計画するのも僕達の仕事です。ゲーム内やSNSで、こういった画像を見たことがあるかと思います。

b07_lv01_05.jpgb07_lv01_06.jpgリィンカネのゲーム内で開催される、イベントやキャンペーンを告知する画像

及川
ゲームに直接関わる企画だけでなく、キャラクター達やリィンカネ自体をもっと知ってもらうためのプロモーションもたくさん実施させてもらいました。

b07_lv01_07.jpgリィンカネ公式Xで実際された「#リィンラボ」企画。リィンカネキャラ達の知られざるプロフィールなども紹介されていた

和田
リィンカネの運営当時、こういった企画や告知が毎日のように行われていましたよね。かなり多忙そうな業務に思えます。

横山
色々と決めることが多いので、当時は週3日ほど打ち合わせをしていました。こうやって及川さんと話していると、あの頃を思い出すなあ......(笑)

及川
週5日のうち3日が打ち合わせで、残り2日は打ち合わせに向けた資料を作成する日々でしたよね(笑)

和田
今回は、そんな戦友ともいえる及川さんと横山さんのお話を、どんどん伺っていきたいと思います。

Lv2.施策の初手をどう打つか?

和田
......とは言ったものの、「運営」のお仕事については僕も詳しくないので、どういう話題から始めたらいいでしょう?

及川
ううん......運営に関わる指標は「DAU(1日のアクティブユーザー数)」など色々あるのですが、今回はもっととっつきやすい話のほうがいいですよね。

横山
では、リィンカネの運営中にやった施策について、企画時のエピソードを話していくのがよさそうですね。

和田
それなら読者の皆さまにも伝わりやすいと思います。

横山
ではまず、僕がイベントなどを企画する上で意識していたのは、"お客様の数を維持する"ことでした。

及川
ゲーム運営では、それが一番重要な部分ですよね。

横山
具体的な企画でいうと、リィンカネのリリース1周年のときに、「220連無料ガチャ」という施策を行いました。

b07_lv02_01.jpgリィンカネ1周年のプロモーション施策として、220連の無料ガチャが引けるという大胆な企画を行った

及川
無料ガチャ施策としてはかなり思い切った数なんですが、結果的にとても好評でしたね。

横山
はい。しばらくリィンカネから離れてしまっていたお客様にも戻ってきていただき、ゲーム内で盛り上がってもらえたんじゃないかな、と思います。

和田
ガチャでお気に入りのコスチュームが引けると、ゲームを続けるモチベーションにもなりますからね。いい企画だったなと感じますね。

横山
ありがとうございます。及川さんのほうはどうですかね?

及川
僕としては、リィンカネ特有の運営方法かもしれませんが......"既存のコンテンツを活かす"ことを意識していました。

横山
既存のコンテンツというのは、一例として「討伐戦」とかのことですね。

b07_lv02_02.jpg「討伐戦」は、鹿の姿をした巨大なボスの討伐に挑む常設コンテンツだった

和田
企画にあわせてコンテンツを増やさず、あえて既存のコンテンツを活かした理由がありそうですね。

及川
そうなんです。順を追ってお話ししていきますね。

和田
お願いします。

及川
まず、一般的なソーシャルゲームは、一度離れてしまったお客様はもう戻らないことがほとんどなんです。

和田
運営する側としては、厳しい現実ですね......

及川
ですがリィンカネに限っては、メインシナリオの「新章」をアップデートするたびに一定数のお客様が戻ってきてくださる、珍しいタイプのタイトルでした。

横山
それだけお客様がシナリオを楽しみにしてくださっていた証拠ですね。

新章リリース時は、PVやキャンペーンなど盛り上げるための様々な施策が行われた

及川
だからこそ、新章の開発に注力するためにも、それ以外の開発にコストを割かないよう工夫して企画を考えていましたね。

和田
既存コンテンツを活かしながらの企画は、制約が多くて大変そうですが......?

及川
お察しの通り、大変でした(笑)
でも、悩んだかいもあってお客様に楽しんでいただけた企画も色々生まれたと思っています。

横山
例えば、「最強決定戦」も成果のあった企画のひとつです。

b07_lv02_03.jpg「最強決定戦」施策のプロモーション画像

及川
先ほどお話に出た、リィンカネの常設コンテンツである「討伐戦」を活用して、より高いスコアを目指してランキングを競うイベントでした。

和田
僕自身も、いちプレイヤーとして楽しませていただきました。

横山
そう言ってもらえるのはありがたいですね(笑)

及川
本来なら、ゲーム上に「ランキング機能」を実装するべきなのでしょうが......リィンカネではランキングの公表をSNSで行うことで代替しました。

横山
SNSを使うことで、よりお客様の反応を直に見れるメリットもありましたし、多くの反応があったことで第2回、第3回と施策を続けることができましたよね。

及川
ちなみに、「最強決定戦」のアイデアは横山さんからもらったんです(笑)

横山
え、そうでしたっけ?(笑)
そういえば......お客様がリィンカネの攻略動画を配信サイトにアップしてくださっているのがうれしくて、「大会みたいにしたら面白いのでは?」と話した記憶はあります。

和田
SNSを通じた企画でいうと、リィンカネでは毎月28日(ニーアの日)に、アンケートを取ってアイテムを配布していましたよね。

b07_lv02_04.jpgリィンカネ公式Xでアンケートを行い、結果に応じたアイテムがプレイヤーの皆さまへ配布されていた

横山
ありましたね。毎月アンケートのネタを考えるのは意外と大変なんですが......お客様の反応がうれしくて、次も頑張って考えようと思えました(笑)

和田
思い返してみると、リィンカネでは他にも様々なSNS施策が行われていたように感じます。プレゼントキャンペーンも度々行われていたような?

及川
実は......ちょうどプレゼントキャンペーンに関する"お宝"資料をもってきていまして(笑)

和田
是非見せていただきたいです(笑)

及川
ママの目がデザインされた「ママランドセル」というものがありまして。こんなデザインだったんですが......

b07_lv02_05.jpg「ママランドセル」のデザインイメージ資料

横山
可愛らしいですね。でも、運営中にこれをお客様へプレゼントした記憶はないですよ?

及川
そうなんです......結局、協力してくれる業者さんが見つからず、泣く泣く断念することになりました。

和田
幻のママランドセル......ブログでお披露目できてよかったです。

Lv3.見えない未来の読み合い

和田
ゲーム内のイベントやキャンペーンの企画だけでなく、SNS運営やグッズ制作と、「運営」のお仕事が多岐にわたることがわかりました。

及川
改めて言われると、本当に色々やっていましたね。

和田
当然ながら、それら施策を思いついた順に実施すればいいわけではないですよね。計画はどのようにされていたんでしょうか?

横山
では、ここからはゲームの運営について、もう少し踏み込んだ話をしていけたらと思います。

及川
運営計画がわかる資料として、我々が「運営カレンダー」と呼んでいたものをお見せしようと思うのですが......

b07_lv03_01.jpg運営計画がまとめられた「運営カレンダー」と呼ばれる資料......?

和田
えっと......ボカシが入っていて読めないですね?

及川
はい......この場でお見せできればと準備をしていたのですが、事情があって掲載NGになってしまいました......

和田
なるほど......開発者ブログという体裁上、いつかはNG資料が出てくるものと思っていましたが、ついに。

横山
読者の皆さまにはすみませんが、様々な運営施策がガントチャート的に並んでいる雰囲気だけでも感じてもらえたらと思います。

和田
画像に映っている範囲も、「運営カレンダー」のほんの一部という感じでしょうか? かなり膨大な情報が詰まった資料に思えます。

横山
そうですね。簡単に説明すると、イベント・キャンペーン・ガチャなどの項目が縦にずらっと並んでいまして。

及川
それらの項目毎に、施策が何月何日から始まっていつ終わるのか、横にラインが引いてあります。

和田
よーくラインを見てみると......ひとつの施策が終わったあと、隙間なく別の施策が始まっているように見えますね。

横山
おっしゃる通りで、この「運営カレンダー」で運営計画を俯瞰しながら、常に施策がある状態を維持するようにしていました。

和田
それはやはり、"お客様の数を維持する"ためということですよね。

及川
そうですね。遊べるコンテンツが1日でもなくなると、お客様がリィンカネから離れてしまうかもしれないので。

横山
ただ、施策を途切れさせないように計画するのは本当に大変で......(笑)

及川
大変でしたね......(笑)

横山
単に次々と施策を打てばいいわけでなく、お客様に喜ばれる施策を考え続けなければならない難しさがありました。

和田
ちなみに、喜ばれる施策の傾向とかはあるんでしょうか?

横山
シナリオ系のもの以外だと......やっぱりジェムや、ガチャを引ける「ガチャチケット」がもらえるキャンペーンになりますかね(笑)

和田
まあ、そうですよね......(笑)

b07_lv03_02.jpg記念やイベントにあわせ、ジェムのプレゼント施策が度々行われていた

及川
配布キャンペーンのあと、お客様のジェム所持量が一気に増えた状態は、運営側の視点だとけっこうヒヤヒヤするんですよ。

横山
ジェムを使ってもらえるよう色々手は打つのですが、結局アニバーサリーなどの特別なイベントじゃないと、たくさん使ってもらえないんですよね(笑)

及川
もう少し具体的にお話すると、お正月のある1月からリィンカネ周年である2月までの間は、比較的ジェムの消費が活発になるんです。

横山
逆に、その前の12月はジェム所有量が増える傾向にありましたね。

及川
「運営カレンダー」を直接お見せできないので、今簡単にイメージ図を作ってみたのですが......

b07_lv03_03.jpg即席でつくられた「運営カレンダー」のイメージ(※クリックで拡大してご覧ください)

和田
ありがとうございます。12月というと、ちょうどクリスマスガチャのシーズンでしたね。あまりジェムが使われない時期というのは意外でした。

横山
なのでクリスマスには、魅力的なコスチュームとそれを紹介するPVを用意したりして、イベントを盛り上げるようにしました。

クリスマスのムード満載のPV。魅力的なクリスマス・コスチュームばかりで、ガチャを引きたくなってしまうはず......!?

及川
ガチャに登場するキャラコスチュームの3Dモデルは、リリースされる1年以上前から企画して制作を進めないといけないので、より綿密な計画が必要になりますね。

和田
1年以上ですか......その精度で計画が求められるとすると、中には実現できない企画もあったんじゃないでしょうか?

横山
いいところに気が付きましたね(笑)
実は、それに関する"お宝"資料を持ってきているんですよ。

和田
さっそく見せていただきたいです(笑)

横山
こちらの動画なんですが......開発内では「外伝ストーリー」と呼んでいたコンテンツです。

怪物レヴァニアの「外伝」ストーリーの試作モック。朗読がついた人形劇のような雰囲気のシナリオコンテンツになる予定だった

和田
ありましたね。個人的にもリリースを楽しみにしていた企画だったのですが、実現は叶いませんでした。

横山
リィンカネに求められているシナリオコンテンツを増やそうと試みたのですが......施策モックの段階まで進んだものの、頓挫する形になってしまいました。

及川
メインシナリオの開発とコストが合わなかったのもありますし、「ボイス」が必要なシナリオは運営計画に合わせるのが非常に難しいんです。

和田
声優さんをスタジオにお呼びして収録......と工程が複雑になりますからね。

横山
ですが、この「外伝」の構想がのちに実装される「シークレットストーリー」に繋がっていくんです。

b07_lv03_04.jpg運営中に追加された「シークレットストーリー」。キャラクター達の追加シナリオを読むことができた

及川
「シークレットストーリー」はボイスがつかないシナリオコンテンツだったので、コスト的にも運営計画的にも落とし込みやすかったんです。

和田
テキストが主の企画になったことで実装できる数も増えますし、より多くのキャラクター達のエピソードを語れるので、シナリオ側としてもうれしい企画でしたね。

Lv4.運営を振り返る最後の一手

和田
さて、色々な話題がでたところですが、そろそろ対談も締めに入っていきたいと思います。

横山
えっと、まだ時間があるならちょっといいですかね? 実はもうひとつ"お宝"を持ってきてまして(笑)

和田
さすがは横山プロデューサー......まだ隠し玉を持っていたとは。

横山
最後に僕から「純金ママ」の話をしておこうかと。

及川
あー! 運営初期の頃に作りましたね(笑)
リィンカネの事前登録100万人突破記念で作った、世界にひとつしかない激レアアイテムです。

横山
そうなんです。当時で100万円相当の価値があったはずですよ。

b07_lv04_01.jpg世界でたったひとつの「純金ママ」。レア度も価値もピカイチ

和田
まさに幻のアイテム......まさか、今日はその純金ママを?

横山
いえ、今日持ってきたのは純金ママの「型」です(笑)

b07_lv04_02.jpg金・銀・銅のバリエーションが可愛らしい「純金ママ」の型。リィンカネ公式資料集の背表紙の厚みと同じくらいのサイズ感

及川
これはこれでレアものですね。

和田
本物の金でなくていいので、置物として普通にほしいです......

横山
そうでしょう?(笑)
ということで、僕からは以上でした。

及川
僕も横山さんに負けじといいでしょうか?

和田
及川さんまで隠し玉を......!? もちろんどうぞ。

及川
それでは、僕からはこの写真を......(笑)

b07_lv04_03.jpg 手書きで紙に書かれたラフなイラスト。このキャラクターは......!

和田
えっと、この写真は一体?

及川
リィンカネ開発チームの懇親会で行われた、「チーム対抗・お絵描き伝言ゲーム大会」の写真です。

和田
これもある意味、他では見ることができないお宝資料ですね......

横山
お題は「冒険家アルゴー」ですか? 見事に伝言できているように思えます。

及川
はい。他にも、伝言に失敗してまったく別のキャラになったチームもあったりと、なかなか盛り上がりました(笑)

b07_lv04_04.jpgお絵描き伝言ゲームに失敗したチームのイラスト。お題であるアルゴーから、ポッドのようなイラストに......?

横山
ソーシャルゲームの運営をしていると、数カ月に一度は"山場"がやってきますから......チームのみんなを労うためにも、こういった催しは大切だったりしますよね。

和田
山場というと、メインストーリーの新章がリリースされる日は、特に忙しかったんじゃないでしょうか?

及川
そうですね。新章公開日は、開発チーム全員で朝5時に会社に集まって......公開時間である11時までの間、ひたすら新章をプレイしてチェックしていました。

横山
もちろん事前準備は万端にして当日を迎えますが、実際のリリース環境で初めてわかるバグなんかもあるんですよね。

及川
どの章にも何かしらの不具合は出るもので、公開時間までに修正しないといけません。当日は常に緊張感との戦いでしたね。

和田
アプリボットの皆さんの連携によって、リィンカネが支えられていたことを改めて感じられるエピソードですね。

横山
さて、今日持ってきた"お宝"は出し切ったので、そろそろ対談も終わりでしょうか?

和田
そうなります。これまで黙っていたのですが、お二人に次々と"お宝"を出していただいたおかげで、対談時間を1時間ほどオーバーしていまして......(笑)

横山
これは失礼(笑)

及川
久々にリィンカネの運営の頃を思い返せて、話が止まらなくなりました(笑)

和田
いえいえ。運営のウラ話も色々聞けて、ボリュームのある記事になるんじゃないかと思います(笑)

横山
では、我々から読者の皆さまへご挨拶をして締めていけばいいですかね?

和田
よろしくお願いします。

及川
まずは僕から。
お客様の反応を見られるところがゲーム運営の醍醐味であり、モチベーションになっていました。今もあちこちで見かけるリィンカネのお客様のコメントや反応は、日々を頑張る糧になっています。
このブログの感想も、是非「#リィンカネブログ」で投稿いただけるとうれしいです!

横山
僕は今でも、SNSでリィンカネ関連のポストを拝見させてもらっています。運営が終了していて、新しい話題がなくても、リィンカネのことを投稿してくれていて、すごくうれしく思います。
終わってしまったタイトルですが、これからもリィンカネを忘れないでいただけるような取り組みができればと思っています!

和田
ありがとうございました。僕もお二人と同じ想いです。
それでは、次回更新もどうぞお楽しみに......!

及川横山
ありがとうございました~!

<おわり>

2025年09月29日

第6回:ボイスのハナシ

Lv1.ボイスのお仕事?

和田
こんにちは。NieRシナリオ班のリーダーをしています、和田です。
今回のテーマは「ボイス」ということで、『NieR Re[in]carnation(以下、リィンカネ)』の開発トークをしていきたいと思います。
そして、今回のゲストは......

土井
皆さんこんにちは。NieRシナリオ班の土井です。よろしくお願いします!

和田
よろしくお願いします。本題に入る前に、土井さんご自身のお話も伺っていきましょう。

土井
分かりました。僕はもともと役者をしていて、シナリオ班に加入しました。初期メンバーである和田さん達の少し後、"1.5期生"みたいな時期でしたね。

和田
役者から、ゲームシナリオライターへ......少し変わった経歴に思えますね?

土井
意外といるみたいですよ(笑)
自分は役者をしつつ、脚本も書いたりしていたので、それが加入のきっかけになりました。

和田
リィンカネにおいてもそれらの経験を活かして、シナリオライティングはもちろん、演出周りのお仕事もお願いしていましたよね。

土井
はい。ブログの「第4回:BGMのハナシ」に登場していた柳川さんが担当される前は、一時期、僕もBGMの演出付けをしたり......

和田
そして何より、今回のテーマである「ボイス」に関わる業務も色々関わっていただいていました。

土井
リィンカネでは、キャラクターのセリフや朗読に声優さんが声を当ててくれていたので、重要な役割です。

『ヒトと世界の物語』のプロローグ。リィンカネでは、声優さんの声によってキャラクター達に命が吹き込まれていた

和田
声優さんの声を録る「ボイス収録」が一番に思い浮かぶと思いますが、ゲーム開発におけるボイスの業務は他にも色々あるんですよね。

土井
読者の皆さんには馴染みがない方も多いと思いますので......今回は知ってもらうためのクイズを持ってきました!

和田
さすが土井さん、エンタメ力がありますね......さっそくお願いします。

土井
次の2つの動画についている"朗読のボイス"をよ~く聴き比べてみてください。修正前と後で、どんな調整がされたでしょうか?

『太陽と月の物語』1章のゲームシーン。ボイスに関する修正が行われる前のもの

同様のゲームシーンに対して、ボイスに関する修正が行われた後のもの

和田
皆さんお分かりになりましたかね? 土井さんに正解を答えてもらいましょう。

土井
では、正解は......


............


......


...


ボイスの"間"が変わった、でした!

和田
修正前の動画では、朗読と朗読のあいだに、長めの間がとられていてテンポが悪くなっていますね。

土井
修正後の動画では、その間をだいたい0.5~1秒くらいに縮めてもらっています。リィンカネ全体で、それくらいの間になるよう調整されているんですよ。

和田
地味な調整に思えるかもしれませんが、朗読のテンポが悪いと画面タップで読み飛ばされることが多くなるので。ゲーム体験を作るうえで重要なんです。

土井
はい! ということで、ボイスの業務の一端を知ってもらえたかなと思います。

和田
ありがとうございます。今回は、そんなボイスに関わる開発のあれこれをお話しできればと思っています。

土井
よろしくお願いします!

Lv2.台本に書くべきこと

和田
今回は、ボイス業務の中心である「ボイス収録」を中心に、開発トークをしていけたらなと思います。

土井
分かりました。

和田
リィンカネ運営中の収録では、現場でのボイスディレクション的な仕事を、僕達2人が中心になってやっていました。

土井
なので、ボイス収録の開発トークは色々できそうですが......何からお話しましょう?

和田
そうですね、シナリオに一番近い「台本」のことから話しましょうか。

土井
はい! では、リィンカネのボイス収録に使われた台本のファイルを見てみましょう。

b06_lv02_01.jpg

『少女と怪物の物語』の収録に使われた台本ファイル

和田
これはメインシナリオの台本ですね。声優さんに読み上げていただくセリフと、話者となるキャラクター名の文字が、読みやすいように構成されています。

土井
小さく書かれている「◎」で始まる文字が、「ト書き」と呼ばれるものですね。

和田
収録時にゲーム画面をすべてお見せできる訳ではないので、ゲーム的にどういう状況か? キャラはどんな気持ちか? などのイメージをト書きに示します。

土井
この台本で収録されたゲームシーンも観てみましょう。

実際に収録された『少女と怪物の物語』のゲームシーン

和田
それまで文字だけだったセリフに、声優さんの声が入るとグッとくるものがあります。

土井
本当にそうですよね!
あと......やっぱり、レヴァニアの声に怪物的なエフェクトがかかっているのはもったいないですよね(笑)

和田
確かに......

土井
エフェクトがかけられる前の声優さんのお声を知っているからこそ、メインシナリオ上でも素のボイスを聴ければと常々思ってました(笑)

和田
もともとレヴァニアの素のボイスを聴けるのは、キャラクタークエストで解放できるサブストーリーくらいでしたからね。

b06_lv02_02.jpg

『少女と怪物の物語』の主人公レヴァニアのキャラストーリー台本

レヴァニアのキャラストーリーのゲームシーン

土井
リィンカネのメインシナリオでも、終盤少しだけ素のボイスが流れるシーンはありましたが......個人的にはもっと聴きたかったです。

和田
ところで、例で出した台本のト書きには、声優さんにセリフをどんな気持ちで読んでほしいかはあまり書いていませんよね。

土井
ト書きをどのくらい書くかは、作品によってまちまちな印象があります。

和田
リィンカネは比較的、ト書きは必要最低限のことしか書いてないですね。もちろん、具体的なイメージを書いた方がいい場合もありますが......

土井
ト書きを細かく書きすぎると、声優さんの演技がその指定に縛られてしまうことにもなりかねないんです。

和田
役者として活躍されていた土井さんも、ある程度演技を自由にやらせてもらえた方が楽しかったりするのでしょうか?

土井
そうですね。ト書きが少ない方が、声優さんが書き手の想像を超えてくれる。声優さんの解釈に委ねた方がいいものになると、僕は思っています。

和田
その考えは僕も一緒ですね。リィンカネでは声優さんに委ねたからこそ生まれた、良いシーンがたくさんあったと思っています。

土井
はい!
それとは別に......ト書きがほしいと思うのは、アケハのシナリオとかでしょうか(笑)

b06_lv02_03.jpg

和装の暗殺者アケハのキャラストーリー台本

アケハのキャラストーリーのゲームシーン

和田
◎のト書きに、読み仮名の指定がたくさん......アケハは和風で少し古風なテキストが味ですからね......

土井
そこはアケハのライターさんがこだわっていた部分でもあるので(笑)
こういうト書きでの指定は、雰囲気作りのためにも大切だなと思います!

Lv3.収録は失敗できない

和田
ここまで台本ファイルを見てきましたが、実際にその台本が使われた「ボイス収録」のことをお話していきましょう。

土井
収録は、収録スタジオさんや専門のスタッフさんも関わりますし、声優さんにもお越しいただいて......と、多くの人が関わるんです。

和田
台本通りにセリフを読んでいただいて終わり、とはいかないこともありますし......

土井
多くの人が関わるからこそ、やり直しや失敗が許されない現場でもありますね。

和田
ゲームシーンを観ながら、一例をお話していきましょうか。

『ヒトと世界の物語』のプロローグにあたるムービーシーン

土井
何人かのキャラクターが一堂に会するシーンですね。

和田
ゲーム画面に表示されていないセリフも多いのですが、ある程度は台本に書かれています。

b06_lv03_01.jpg

プロローグシーンの台本ファイル。《》で囲まれたセリフはゲーム画面上に表示しないことを示す記号

土井
ですけど、このムービー中に必要なセリフすべてを台本に書ききることはできないんですよね。

和田
はい。キャラ達が走った時の息遣いなど、映像を観ながら声優さんの「アドリブ」にお任せする部分も出てきます。

土井
初めに言った通りボイス収録はやり直しがしにくいので、臨機応変さが求められる収録はかなり慎重にしないといけません。

和田
ムービーに映っているキャラの口の動きと、息演技やセリフがあっていない......みたいなことが起きないよう、細心の注意を払って収録に挑みましたね。

土井
上で例にあげたシーンは、登場するキャラの数も多いので大変でしたが......なんとか形になったのではないかと思います!

和田
無事に終わって何よりでした......

土井
ブログ的には、収録で失敗してしまったエピソードとかも、お話したりした方がいいですかね......?(笑)

和田
そうですね......では、次のシーンを観ていただきましょうか。

『太陽と月の物語』のバトルシーン

土井
魔女サリュと獣人プリエのバトルシーンですね。お互いの悲痛なボイスが入った、悲しい戦いです......

和田
もともとこのバトルでは、キャラ同士の掛け合いが入っていませんでした。

土井
あれ、そうだったんですね。

和田
2人の見せ場となるバトルということもあり、セリフがあった方がより良くなるだろうと、急遽ですが追加させてもらいました。

土井
なるほどですね。でも、それが失敗談なんですか?

和田
実は......セリフを追加しようと思い立った時には、既にプリエのボイス収録が終わってしまっていたんですよ。

土井
あ......でも、だったらプリエのボイスはどこから?

和田
プリエの『武器の記憶』のバトルとはまったく関係のないシーンなんですが、念のため撮っていたものの演出的に使わなかったボイスがあったんです。

b06_lv03_02.jpg

獣人プリエの『武器の記憶』で、画面いっぱいに文字が敷き詰められる演出があった。ボイスを収録したものの使わない方針になっていた

土井
そういうことでしたか! よく見ると、バトルで流れていたセリフと同じ文字がシーンに紛れていますね。

和田
収録はやり直しがしにくいからこそ、使うか検討が必要なものがあれば一応撮っておく......という選択をすることもあります。

土井
ここで撮っていたボイスを組み合わせて、掛け合いを構成したんですね。

和田
そういうことです。
ボイスは収録して終わりではなく、組み込まれる過程で完成度を高められるのも、ゲーム開発の醍醐味かもしれません。

Lv4.ボイスの方針

土井
ボイスに関わるお仕事について色々話しましたが......読者の皆さんにも伝わったでしょうか。

和田
文章では伝えにくい内容ですからね......でも、伝わったと願っています。

土井
そうだとうれしいですね。

和田
さて、記事の締めに入っていこうと思いますが、何か言い忘れたこととかはありますか?

土井
では......普通に話すだけでは面白くないので、最後にもう一問クイズを出してみようと思います(笑)

和田
是非お願いします(笑)

土井
リィンカネでは、声優さんに様々な朗読シナリオを読んでいただきましたが、次のうち、特にどれに気を付けてもらっていたでしょうか?

①ゆったりと読んでもらうこと。
②暗い雰囲気で読んでもらうこと。
③聴き取りやすくハキハキ読んでもらうこと。

和田
分かる人は、すぐ分かるかもしれませんね......

土井
選択肢が簡単すぎましたか?(笑)

和田
答えは......②ですね。

土井
正解です! 収録が始まる前に、"暗い雰囲気で"とお願いしていました。

和田
シナリオがハッピーな内容でも、最終的にはどのキャラも不幸になるのだから......と、僕も毎回説明していた覚えがあります。

土井
そもそもリィンカネには、ハッピーな内容のシナリオが少ないですし。強いて挙げるとするなら、これとかでしょうか......

リィンカネのハーフアニバーサリーイベントで公開されたシナリオ『記録:言祝の庭』

和田
明るすぎない、絶妙な声演技ですよね。

土井
こういったボイス収録の方針は、開発初期にクリエイティブディレクターのヨコオさんが定めたものなんですよね?

和田
はい。作品全体でボイスの雰囲気が統一されているのは、そういった前提ルールのもとでボイスディレクションが行われていたからです。

土井
ボイスによって、作品の雰囲気作りに貢献できていたらいいなと思いますね。

和田
さて、今度こそ最後になりますが......土井さんから、読者の方々に一言お願いします。

土井
はい!
声優さんが声を吹き込むことで、知れるキャラの一面が確かにあって、その瞬間に立ち会えた時自分は、綻んだような歪んだような奇妙な顔をしていたように思います。
皆さんにも、そんな瞬間をお届けするお手伝いができていたら......これほどうれしいことはありません。リィンカネを愛していただき、ありがとうございます!

和田
ありがとうございました。
では、また次回更新でお会いしましょう......!

<おわり>