私の名前はアダム・リチャーズです。
Double Helixで「フロントミッション エボルヴ」に携わっているコンセプトアーティストの一人です。主に、ヴァンツァー、環境、武器やビークル、仕掛けからユーザーインターフェイス要素までを含む様々なデザインを担当しています。
デザインが完成すると、その2Dアートを3Dアーティストに提出し、彼らがゲーム内でそのコンセプトに命を吹き込んでいきます。
このプロジェクトの前は、サバイバルホラーゲームの暗くて憂鬱な環境やクリーチャーを2、3年もの間作ってきていたので、そこから抜け出せるのかと思うと、このプロジェクトが決まった時は非常に嬉しかったです。
バスぐらいに大きな銃を放つ巨大な戦闘ロボットのデザインに携われることは、創造力を掻き立てる大きな変化であり、大歓迎でした。 特にこのようにしっかりと確立された、皆に愛されているフロントミッションシリーズであるから尚更でした。

 しかし、フロントミッションのような既知のシリーズ向けにコンセプトアートを作るとなると、やりがいと責任の両方が伴うものです。フロントミッションのシリーズには、デザイン要素に関する基本的な法則が既に存在しています。
無論、そのあらかじめ決められた世界に無難にまとまりすぎるがために、新しいアイデアがないようなことはしたくありません。シリーズの過去作で見たことがある同じヴァンツァー、武器や環境を使い回ししただけでは、プレイヤーはつまらなく感じたりすることもあるでしょう。ということで、私の目標は伝統と進化の程良いバランスを見出すことであり、それがファンの目に成功したゲームとして映ると思っています。

「フロントミッション エボルヴ」でまず私は、過去作からできるかぎりの資料をかき集め、他のゲームのメカにはない、ヴァンツァーの特有性を研究しました。
フロントミッションには、ファンタジーやSFの世界には見られない、非常に「リアルな軍事」デザイン感覚があることに気づきました。勿論、現実世界の軍隊には高さ8メートルもある機動車両なんか存在していませんが、もし存在していたら、こんな感じでしょう。ヴァンツァーの新たなデザインを考えていくにあたって、現実世界における軍用機械の要素をなるべく忠実に再現しながら、従来のヴァンツァーをどのように進化させていくかの方針も極力取り入れようとしました。
このプロジェクトで私が一番気に入っているのは、新しい超重型航空輸送車両である「アルバトロス」のアイデアを考え出したことです。ヴァンツァーは3体まで、車両も何台か、地上歩兵も何部隊か輸送可能です。輸送中のヴァンツァーは、この車両そのものに装備されている二連装ガトリング砲を操作でき、見事な空飛ぶ要塞と化します。
車両はあり得ないぐらい巨大ですが、フロントミッションのデザイン基準に従うと、こんな感じになるのではないかと思います。実世界の軍用機の要素を取り入れて、車両に真実味を持たせながら、できるかぎり機能的にも見せようとしました。V-22 OspreyやMil-22 Hindがこのコンセプトに大きな影響を与えました。
 
 
僕にとって、大未来都市となる環境のコンセプトをデザインすることは、最初は大変な仕事でした。
無論、スケール感は重要な要素ですが、プレイヤーが本筋をそれることなく、かと言って1本道をただ進めているという感覚にならないように街路を配置するのは難しかったです。
最終的には街路の正投影図を数多く描いたり、巨大なヴァンツァーからエリアを封鎖する方法のひらめきを探し求めて、何千もの街の写真を眺めたりしました。プレイヤーが体験する街路やエリアよりも遥かに都市が広大であるという感覚を与えたくて、ヴァンツァーが潜ったり、飛び越えたりするにはあまりにも小さすぎる、または高すぎる高架交差路やトンネルも取り入れました。ということで、「視野が狭い」体験しかできない都市環境は作りたくなかったのです。
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「フロントミッション エボルヴ」の発売もいよいよ近づいてきています。このプロジェクトでは幾つもの楽しい思いをしました。更なるヴァンツァーを作り始められるよう、皆さんにゲームを楽しんでいただけることを願っています!