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水田 直志 Naoshi Mizuta

好きなもの: たい焼き(近頃は、皮が薄いのとかいろいろありますが、普通のが好きです)、 コーヒー(淹れるのも含めていいですね)、 iPhone(すかっりはまってしまいました) 写真撮影(オリンパスのe-510を使用中、raw現像もまた楽し) お散歩(遠出からご近所まで)

水田 直志

マスタリング その2

前回の記事で、「マスタリング」とは、「収録曲一曲ごとに音量調整や音質補正をかけ、それらをまとめて一枚のCDとして完成させる作業」という説明をしました。

さて、僕がマスタリングをお願いするとき、いつもここと決めているスタジオがあります。

それは、「オレンジ」というマスタリング専門のスタジオです。

もうだいぶ前のことですが、FINAL FANTASY IX関連のCDをオレンジさんでマスタリングしているのを、たまたま見学させてもらったことがあります。

そのとき、ちょうど"Melodies of Life"という白鳥英美子さんの歌う楽曲を調整していたのですが、そのときの体験は今でも忘れません。

エンジニアの小泉さんがしばらく曲を聴いた後、おもむろにイコライザー機材を調整すると、まるで白鳥さんが目の前で歌い始めたかのようにくっきりと歌声が浮び上がってきたのです。

誤解のないように言いますが、マスタリング前の状態でも、とてもきれいにミックスされていて、そのままでも十分素晴らしい仕上がりでした。だれが聴いても完成形といっていい状態です。

にもかかわらず、小泉さんが調整すると、今までレース越しに見ていたものを、レースを取り払ってじかにそのものを見たかのようにくっきりと各楽器に磨きがかかるのです。

このとき僕は、次回から必ずここでマスタリングをお願いしようと決めました。

いっけん簡単そうにきこえるこの調整作業、僕のように、そこまでのテクニックがないものがまねしようとすると、単純に高音と低音が増幅された、ただの"ドンシャリ"サウンドになってしまいがちなのです。

そこへいくと、小泉さんは迷いなくピンポイントで要所を的確に補正し、一段と良いサウンドに変身させてくれます。

そんなわけで、それ以降、もう何度も小泉さんにはマスタリングをお願いしているのですが、いまだにそのワザを目の当たりにするたびに、感嘆の声をあげてしまいます。

さて、こんなふうに文章で書いてもなかなか伝わりにくいですよね。

そこで今回は特別に、マスタリング前とマスタリング後、両方の状態をおきかせできるようにしましたので、ぜひ聴き比べてみてください。

音が鮮明に前に出てきて、迫力が増しているのがお分かりいただけると思います。

曲は、"FINAL FANTASY XI Original Soundtrack -PLUS-"より、"Melodies Errant"です。

Melodies Errant (マスタリング前)

Melodies Errant (マスタリング後)