NieR Blog

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2025年08月28日

第5回:メインシナリオのハナシ

Lv1.NieRの呪い?

和田
こんにちは。NieRシナリオ班のリーダーをしています、和田です。
この開発者ブログでは、『NieR Re[in]carnation(以下、リィンカネ)』の開発トークをお楽しみいただければと思います。
まずはゲストをご紹介したいのですが、なんと今回は"あの方"が......

???
あーあー、声ちゃんと届いてますかね?

和田
お、ちょうど通話が繋がりました。はい、声聞こえてますよ。

松川
よかった......!
皆さんこんにちは。リィンカネのディレクターを務めた、株式会社アプリボットの松川です。

和田
本日はよろしくお願いします。
松川さんは本当にご多忙で、なかなか予定が合わなかったのですが......今回ビデオ通話を使った「オンライン対談」という形で時間をつくっていただけました。

松川
久しぶりに直接お会いしたかったのですが、すみません。

和田
いえいえ、とんでもないです。

松川
ちなみに、和田さんのビデオ通話の背景に映ってるのって、皆さんのチームが引っ越したスクエニ渋谷オフィスですかね?

和田
そうですよ。リィンカネの開発打ち合わせで松川さんが来社していた頃は、まだ新宿オフィスにいましたね。

松川
ですね。もはや懐かしいです。

和田
念のため......後ろを人が通ったりするので、「リィンカネのバーチャル背景にしておきますね。

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リィンカネ公式Xで配布されている、オンライン通話用のバーチャル背景。他にもいくつかのデザインが配布されている

松川
背景にママが映って雰囲気出てきましたね(笑)
今日は久しぶりにリィンカネの話ができるので、楽しみにしてきました。

和田
ありがとうございます。今回はリィンカネの中核コンテンツともいえる、「メインシナリオ」の開発をテーマにお話を伺っていこうかなと思っています。

松川
はい、なんでも聞いちゃってください。

和田
でもその前に......せっかくなので松川さんご本人のことを伺っていきましょう。だいぶご無沙汰ですが、松川さんは最近も色々ゲームを作られているんですか?

松川
そうですね。ただ......リィンカネ以降、作るものについて悩みがあって。

和田
悩みというと?

松川
すっかり"彩度の低いもの"が好みになってしまったんですよ。他の作品のディレクションをしていても、「これ、明度や彩度が高すぎるかな?」と感覚がバグってしまって(笑)

和田
それはもう、NieRの呪いですね......

松川
呪い......そうかもしれません(笑)

和田
松川さんは、度々「NieRっぽさ」について言及されてましたけど、元々シリーズのファンだったんでしょうか?

松川
はい。実は『NieR:Automata(以下、オートマタ)』が大好きで。リィンカネ初期のイベントクエストでオートマタとのコラボした時も、僕がプロットに関わっていました。

和田
ディレクター自ら書かれていたんですね。

松川
オートマタの世界観なら、自分も書けるかなと思って内緒で挑戦してみました(笑)

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リィンカネとオートマタがコラボした際の、イベントクエストのスチルアート

和田
オートマタからNieRシリーズを知って、リィンカネを遊んでくれたお客様も多そうですからね。2Bや9Sの新規エピソードに触れられて、喜ばれたんじゃないかと思います。

松川
ありがとうございます。オートマタをプレイして感じた感動を、リィンカネでも伝えられていたらいいなと思います。

和田
伝わっていると信じています。では、今日の本題へ入っていきましょうか。

松川
はい。今日は、リィンカネ発足時の企画段階の資料をいくつか持ってきました。

和田
一体、どんなものが出てくるんでしょう......

松川
まずはこれ、覚えてますかね?

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企画段階のタイトル画面。『NieR Re[in]carnation』というタイトルに決まる前の、仮タイトルが載っている

和田
あ~懐かしいですね。確かに、開発初期は「ニーア グランギニョール」という仮タイトルがつけられていました。

松川
こんな感じで、当時の開発資料を色々用意してきたので、見ながらお話できればと。

和田
期待が膨らみますね。

Lv2.「発明」するしかない!

和田
では、まずは企画段階のお話からお伺いできればと思います。

松川
よろしくお願いします。

和田
リィンカネは、『檻』や『武器の記憶』といった独特な世界観のうえでメインシナリオが描かれますが......ゼロから作りあげることに様々な苦労があったのではないでしょうか。

松川
そうですね。最初にイメージを固めるために、モックを組むことから始めました。

和田
ゲームの見た目や遊びの方向性がわかるような、試作品を作ってみるわけですね。

松川
はい。リィンカネキャラのモデルが作られる前なので、オートマタで使用されていたキャラのモデルを使ってモックを作っていました。
実際に、映像を観ていただくのがわかりやすいと思います。

リィンカネの初期モック。2Bがキャラモデルとして使用されている貴重な映像

和田
企画会議で初めて観た時に、感動した記憶があります。当時のスマホは今ほどスペックが高くなかったのに、その中でオートマタのキャラがそのまま動くんだな、と。

松川
このモックの映像からも、3Dマップの『檻』と2Dマップの『武器の記憶』を交互に体験するゲームなんだということが伝わると思います。

和田
ですね。そういったゲームサイクルやアートの方向性を決めるのが、モックの意義なんでしょうか?

松川
それもあるのですが......モック段階では、クリエイティブディレクターであるヨコオさんと一緒に、本制作に関わる別のことも決めていました。

和田
そうなんですね? なんだろう?

松川
モックを使って固めたのは、キャラの「移動速度」なんです。

和田
移動速度とは......意外でした。

松川
それによってゲームの"背景が移り変わる秒数"が変わるんです。背景をどれだけ作るかは、開発コストにも影響が大きいんですよ。

和田
なるほど。キャラが速く走れるほど、背景がどんどん移り変わって、たくさんの背景を作る必要がでてくる......ということですね。

松川
はい。そうやってゲームの基盤を設計したら、ようやく世界観やアートを考えていく段階になります。例えば『檻』の場合だと......このアートとか、覚えてますかね?

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『檻』のビジュアルを決めていくために使われた、初期のコンセプトアート

和田
ありましたありました。それなら......僕はこのアートが印象に残っていたりします。

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『檻』のビジュアルを決めていくために使われた、初期のコンセプトアートの別案

松川
懐かしい(笑)
『檻』が今の形になるまでに、何通りものアートを描いてもらって試していました。

和田
『檻』はビジュアルの美しさが特徴的ですが、リィンカネのような運営タイトルだと、継続的に3Dの背景を作っていくのは大変そうですよね。

松川
その通りです......(笑)

和田
効率よく制作するための工夫としては、どういったことをされていたんでしょう?

松川
最終的に『檻』では、石造りの"パーツを組み合わせる"形に落ち着きました。

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最終的な『檻』のコンセプトアート

和田
石造りの塔が立ち並ぶという世界観は、そういったコスト面のことも考慮されていたんですね。

松川
コスト面も考えてアートを決めることは、ヨコオさんからも強く要望があった部分でした。

和田
でも、結局美しさへのこだわりが捨てられず、毎章ユニークで作ってしまっていた......ということはよく運営中に耳に入ってきました(笑)

松川
多少の流用は効くのですが......今回は、その話は置いておきましょう......(笑)

和田
さて、ここまでで『檻』の制作における様々な試行錯誤が垣間見れました。『武器の記憶』も同じように大変だったのではないでしょうか?

松川
そうなんですよ。『武器の記憶』は参考にできる作品や資料が本当に少なくて。ほぼ「発明」するような気持ちで作り上げました。

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『武器の記憶』のゲーム画面(開発当時のもの)。2Dによって表現されることから、開発では「絵本」パートという名称で呼ばれていた

和田
「朗読劇」の形にすることは最初から決まっていたんですよね。

松川
はい。なので、そのテイストに合うような『武器の記憶』のアートもたくさん描いてもらっていました。例えば、こんなアートとか......

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『武器の記憶』の背景アートイメージ

和田
童話が語られる絵本のような雰囲気のアートですね。あとは、こういったリアルテイストのアートも描かれていましたよね。

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『武器の記憶』の背景アートイメージ。別案

松川
今見返すと、いろんな方向性が試され――、苦労――――跡が見え――ね(笑)

和田
あれ、松川さん? ちょっとビデオ通話の音声が途切れてます?

松川
え......あ、声届いてます?

和田
大丈夫みたいです。正常に戻りました。

松川
よかったです。僕達が画像や動画を映しすぎて、ネット回線が圧迫されたのかもしれませんね(笑)

和田
そのおかげで、貴重な開発資料がたくさん載ったブログ記事になると思います(笑)

松川
開発初期のモックやアートは懐かしさ半分、恥ずかしさ半分ですけど。こうやって日の目を見るのはうれしいですね。

Lv3.見えない工夫を詰め込んで

和田
こうした試行錯誤を経て、『檻』や『武器の記憶』が生まれていき......その上にメインシナリオが乗せられていくわけですね。

松川
開発的にも、ようやくといった感じです。

和田
リィンカネは「少女と怪物の物語」「太陽と月の物語」「ヒトと世界の物語」という3つのメインシナリオから構成されるので、それぞれ順を追って話していければと思います。

松川
では、まずは「少女と怪物の物語」ですね。

和田
最初にシナリオを読まれた時、どう感じられましたか?

松川
そうですね......やっぱり「考える余白」や「余白の美しさ」がありますよね。受け取った瞬間に、ヨコオさんのシナリオだと思えました。

和田
読み手によって受け取り方が変わる物語ですよね。

松川
そうですね。救われたのか、救われていないのか......その判断をお客様に委ねている感じ。そんなところが初めて読んだ瞬間に好きになりました。

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「少女と怪物の物語」のエンディングムービーの制作過程。喪失の中にも希望が見えるようなラストシーンだった

和田
「少女と怪物の物語」だと、主人公であるフィオの体調が悪くなった時、画面にノイズが入る演出は印象的でした。あれは、オートマタのオマージュ的な演出だったりしますか?

松川
そうですね(笑)
オートマタファンとして、リィンカネでも取り入れたかった演出のひとつです。

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弱っていくフィオに呼応するように、画面や音声にノイズが混じっていく演出がなされた(ゲーム画面は開発当時のもの)

和田
随所に、松川さんのこだわりが詰まっているということですね。

松川
こだわり自体は、かなりありましたね(笑)

和田
続いて、「太陽と月の物語」の話に移りますが......ここで『檻』の見た目が大きく変わりましたよね。

松川
はい。少女と怪物の物語では『檻』の特徴付けとして「布」が使われていたのですが、それが「鉄」に置き換わりました。

和田
なかなか大きな変更に思えますが、開発としても苦労されたのではないでしょうか。

松川
そうですね......鉄になったことで、スマホ上で処理しきれるかのテストが必要になりました。

和田
鉄は、構造物としても複雑になりそうですしね。

松川
モデルも複雑になりますし、鉄の反射や質感を入れると描画負荷が大きくなってしまいます。どう工夫して実現させるか、相当考えましたね。

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『檻』に鉄の要素を組み合わせるための試験的なモックイメージ

和田
具体的にはどんな工夫を?

松川
遊んでいて気付かれた方がいるかはわかりませんが......実は「少女と怪物の物語」の時より、カメラが"寄り"になっているんですよ。

和田
カメラが寄ることで、画面内に映るものが減る......ということでしょうか?

松川
まさしく。鉄の要素が加わって描画処理が重くなったぶん、一度に画面に映る範囲を狭くすることで処理負荷を下げた......という感じです。

和田
そんな見えない工夫があったとは。

松川
そういう"落としどころ"を決めることも、ディレクターの役割ですね。カメラが寄り引きすることで結果的にメリハリが出て、見映えも良くなりました。

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最終的な「太陽と月の物語」の『檻』のコンセプトアート。石造りの塔と、鉄の要素が見事にマッチしている

和田
貴重なお話をありがとうございます。では、最後に「ヒトと世界の物語」にまつわるエピソードもお伺いしていきましょう。

松川
そのシナリオの開発は、本当に色々なことがありましたね......

和田
そうですね......

松川
............

和田
............

松川
すみません、色々思い出して黙っちゃいました(笑)

和田
同じくです(笑)
「ヒトと世界の物語」の開発で最初にヨコオさんから受けたオーダーが、『檻』の構造をがらっと変えるものでしたよね。

松川
『檻』が上下対称になったりして、キャラが天井を歩いたりするんです。最初に聞いた時は「無理では?」と思いました(笑)

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「ヒトと世界の物語」のゲームシーン。天地が逆さまになり、天井を歩いて進むステージがあった

和田
リィンカネの運営もしながら、同時にゲームの基盤も作り直すような開発だったんじゃないでしょうか......

松川
そうですね......ただ、ヨコオさんが書かれたメインシナリオのプロットを読んで、「無理でも作りきろう」と思うことができたんです。

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「ヒトと世界の物語」における、全体の骨子を決めるプロット

和田
「ヒトと世界の物語」では、オートマタなどのNieRシリーズとリィンカネの繋がりが明かされましたよね。僕達シナリオ班も、読んでテンションが上がっていました(笑)

松川
アプリボットの開発チームでもそうです。みんなで読み合って、「ついに!」と盛り上がってましたよ(笑)

和田
あとは、「ヒトと世界の物語」のシナリオ制作では、珍しくヨコオさんが悩んでいる姿を見ることができたのが個人的に新鮮でした。

松川
開発中の会議でも、即決されることが多い方なので。それは本当に珍しいですね。

和田
リィンカネ全体のエンディングを描く物語なので、様々な考えや想いがあったんだと思います。最終的に、しっかり最後を飾るにふさわしい物語になっていましたね。

松川
そのおかげで、我々アプリボットでも「これは僕らが作ったんだ」と胸を張れる体験にしようと、全員が力を注ぐことができました。いいものになったと自信を持って言えますね。

和田
はい。それは、シナリオ班一同も自信を持って言えます。

Lv4.一番大事な話?

和田
開発中の貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。

松川
僕も色々と話せてうれしかったです。

和田
では、最後になりますが......サービスが終了した今、開発を振り返ってみての話を伺えたらと思います。

松川
そうですね......リィンカネは、自分がゼロから関わった初めてのタイトルだったんです。とても多くのことを吸収して、成長させていただきました。

和田
思い入れもひとしおなわけですね。

松川
そうですね。特にフィオは、娘のようにも感じていたりします。

和田
娘、ですか。

松川
はい。今回お見せしたモックの映像では、オートマタのキャラを使っていましたが......初めてリィンカネキャラとして『檻』を歩かせたのが、フィオだったんです。

和田
そうでしたね。当時の動画が残っていたので、映してみましょう。

「少女と怪物の物語」の開発初期のモック。制作途中のフィオのモデルで、『檻』を歩くことができた

松川
懐かしいなぁ......開発中は彼女がゲーム内で成長していく感覚がありましたね。

和田
松川さんは企画初期からフィオの背中をずっと見守ってきた、ということですね。

松川
そうなりますね。リリース時には、「いい舞台で世に出られたね」と、親心みたいな気持ちにもなったりしました(笑)

和田
ブログの締めとして、とてもいいお話を聞くことができました(笑)
では、最後にブログ読者の皆さまへメッセージをお願いできればと思います。

松川
はい。今もこうしてブログを読みに来てくださるお客様は、リィンカネを本当に好きでいてくださる方だと思っています。
開発者として至らない部分もあったかと思いますが、記憶に残るゲームをお届けできたなら、開発者冥利に尽きます。本当にありがとうございました。

和田
本当にありがとうございました。

松川
僕自身、今までもNieRが大好きでずっと助けられてきたので......これからもヨコオさんに恩返しできることがあればやりたいなと思っています。任命されたら、ですけどね(笑)

和田
その想いはきっと届くと思いますよ。

松川
そうだといいですね(笑)

和田
さて......今回オンライン対談として確保していた枠より、少しまだ時間がありますね。松川さんからもう一言、今だから言えることとかがあれば是非お願いします。

松川
じゃあ、せっかくなので――。リィンカネは、僕が――――まで――、――最初から――――ます。

和田
ん? ちょっと、急にまた通信が途切れ途切れに? もう一度いいでしょうか?

松川
あれ? おかしいですね。えっと、今振り返っ――、――――――秘密――――の――――

和田
あっ......本格的に聞こえなくなってきた? 松川さん?

松川
――、――――!

和田
すみません、声が聞こえなくてもう一度お願..................あ、通話が切れました。

最後に何やら気になることを仰っていたようにも思いますが......もしかして、これが松川さんの言う「考える余白」......?
さすがリィンカネのディレクター、ご自身でNieRらしさを体現して去っていかれました。

えっと......ということで、対談を締めていくのですが......
皆さま、また次回をお楽しみに......!

<おわり>