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祝!「ファイナルファンタジーXI」サービス開始10周年

昨日の岩崎さんのブログに続き、僕も当時のことを思い出して書いてみたいと思います。

いまでこそ、ゲームがネットにつながっているというのは当たり前の話ですが、当時はまだまだ一般的ではなく、僕も"UltimaOnline"というゲームを知識として知っているという程度でした。

ましてや、FFXIのように多人数が同時にネットにつないで同じ世界で遊ぶMMORPGというジャンルのゲームは、まだほとんどの人がどのようなものか理解すらしていないような感じでした。

そんな状況だったので、これから作ろうとするMMORPGというゲームはいったいどんなゲームなのかということを、まずはひととおり体験して理解するために、会社から1台のPCと、そのジャンルで代表的な、ある1本のゲームソフトが渡されました。サウンド代表として僕の部屋にそのPCをおいて、そのゲームをみんなで遊んでみることになったのです。

その場には、同僚の岩崎さん、山崎さん、そして唯一そのゲームの経験者である矢島さんなどが一緒にいたと記憶しています。

ゲームをインストールして、キャラクターを作ってというところまでは、いままでのゲームと変わりありませんでした。

名前やクラス(ジョブ)を決めて、さて、いよいよゲームのフィールドに降り立ちました。ぽつんと立つ自分のキャラクター。

なにか途方もなく広大な、未知の世界に突然連れてこられたようで、何をすればよいのか全く分からず呆然と立ち尽くしている自分。

すると、ふと目の前を自分とよく似たエルフのキャラクターが走り抜けていきました。そのとき、僕の後ろでいろいろ教えてくれていた矢島さんがひと言、

「いまのはPCっすね」

僕:「えっ、PCって?」

矢島さん:「ですから、どこかで誰かが操作しているキャラということです」

それをきいた瞬間の衝撃を今でも覚えています。

見知らぬだれかが、一緒にこの画面の中にいる!?

どういうことだと、周囲をうろうろ歩いてみました。

すると、今駆け抜けていった人だけでなく、他に何人もの人が、会話をしたり、モンスターのようなものと戦っているのが目に入りました。

僕:「これ全部誰かが操作しているキャラなの?」

矢島さん「そうですね。ホラ、あそこではパーティー組んで戦っていますよ」

こ、これは、とんでもないゲームだ...ゲームというか、これはもう世界そのものじゃないか...と感動で胸がいっぱいになりました。

いままでゲームといえば、たとえどんな大作であっても、すべてはあらかじめプログラムされてCDやDVDに焼きこまれて固定されたデータであり、プレーヤーが再生していくそれらは有限であるという限界がありました。(そこには、たしかに美しいグラフィックで描かれたマップや素晴らしいストーリーやがありましたが)

しかし、いま体験したゲームは全く概念からして違う。

会話をすれば、生身の人間と会話することであって、あらかじめ用意されているデータが表示されるのではない。

バトルをすれば、ヒール(ケアル)してくれるのは誰かが実際にそうしてくれてるのであって、けしてプログラムされたものではない。

これを究極のゲームといわずしてなんという!!

それくらいの勢いで、本当に興奮してしまったものです。

その日は、みんなが帰ってしまってからも終電ぎりぎりまで遊んでしまいました。

そして、気がつくとMMORPGの底なしの魅力に取りつかれてしまったのです。

...開発のお話とはちょっと関係のない話題になってしまいましたね。

ただ、それくらいの衝撃が当時はあったということです。


さて、FFXIの音楽をどうしようかとあれこれ考えていたある日、植松さんがひょっこり僕のブースに現れました。

植松:「みずたー、テトラマスターっていうゲームの音楽の仕事があるんだけど、やってもらえるかな~?」

水田:「えっ、植松さん、もう僕FFXIやるだけで本当にいっぱいいっぱいで、なんせ初めてFFやらせてもらえることになって、とてもじゃないけどそんな余裕ありまs」

植松:「えっ、やってくれる!? ありがとう!  じゃ、よろしくー!!」

てなわけで、「テトラマスター」というカードゲームの音楽も同時に担当することになりました。

(ちなみにそのゲームのディレクターは、現在「キングダムハーツ」シリーズのCo.ディレクターとして活躍中の安江さん)

今から考えるとこのゲームを担当してとてもよかったと思います。

というのは、FFXIの音楽は、岩崎さんのシンセ・オペレートとタッグを組んでやることになっていたのですが、まずはこのゲームを先にやることでお互いを知るきっかけとしてよいスタートアップになったのです。(のちに野田さんも合流)

それまで僕は、作った曲をプレイステーションの内蔵音源に載せるところまで自分でやっていたので、このように作曲から先の手順を人任せにしたことはありませんでした。

もちろん岩崎さんの仕上がりに期待はしていましたが、それと同時に、ちゃんと意図したとおりの音に仕上げてもらえるのかという不安も少しはあったと思います。(今では考えられないことですが)

さて、テトラマスターではじめて岩崎さんと仕事をすることになって、まず驚いたのは機材の量!

 ラックにうず高く積み上げられたシンセサイザーとサンプラーの山をみて嬉しくなってしまいました。これらを駆使して曲を仕上げてもらえるのだな、と。

実際作業が始ってみると、本当に楽しかったのを思い出します。

たとえば僕が、こんな感じの笛の音ないですかというと、「ホイきた」とばかり出てくる笛の音色の数がハンパない。

聞いたことのない笛の音を出してくれたり、こんなのはどうでしょう?では、これは?という具合にで、まさに人間検索エンジン。とても頼もしかったです。

また、そんなのどっちでもいいじゃないかというような細かいこだわりでも、いやな顔一つせず修正につきあってくれて、ありがたかったです。

扱う機材にもこだわりがありました。

ケーブルは極太の特注品。

 普通のオーディオケーブルは、先端を機材のINとOUTのどちら側に差し込むかはとくに決まっておらず、どちらでもいいのですが、そのケーブルは違いました。

楽器のOUTに差し込むほうと、録音機材のINに入れるほうとが指定されているのです。

シンセの音色をデジタルデータに変換するADコンバーターという機材も、目玉が飛び出るような高額の機材を使っており、正直、PS2の内蔵音源にするにはもったいないような使い方でした。

ただ、実際の音色もよかったですし、そういう姿勢で曲を仕上げてくれる仲間にこちらも気が引き締まる思いでした。

そうやってテトラマスターができ上がるころには、お互いばっちり信頼関係も築くことができ、来るべきFFXIの曲の仕上げも安心して任せることができるようになっていました。

話はテトラマスターの話題になってしまいましたが、僕の中で当時の制作の様子はこのあたりと切っても切れず、一緒になっているのです。

「ファイナルファンタジーXI」の音楽開発は、このようにして幕を開けました。


さて、お読みいただいた皆様に感謝の気持ちをこめて「テトラマスター」の曲を1曲お届けします。

ここでしか聴くことのできない、未CD化音源です!

(写真は、当時の開発資料。手書きのカレンダーは、締め切り前のぎりぎりの状態、スケジュールで苦労している様子)

 

IMG_3553(mizuta).jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テトラマスター」より

岩崎です。今日でFFXIサービス開始から丁度10年ですね。

 関係者の皆様おめでとうございます!!

 昨晩ツイッターでFFXI 10周年おめでとう!とつぶやいたら、植松師匠からこんなメッセージを頂き思わず、感極まってしまいました。

 @HidenoriIwasaki ホントに早いねぇ。当時僕はもう疲れきっていて、自分に自身を失くしかけてたの。でも岩崎にマニピュレートをお願いしてあったロンフォールが自分の予想以上の出来で、もし周りに助けてくれる人がいれば自分はまだやれるかもって思ったこと覚えてる。さんきゅ!

何ともありがたい一言です。ありがとうございます。

この節目にFFXI開発初期に関わったスタッフとして、開発当初の事を音楽サイドから振り返ってみようと思います。先週水田さんと10周年で記事書きましょうね~なんて話をしましたので、水田さんもきっと何か書いてくれるはずですよ。

 FFXIのサービス開始は2002年5月15日ですから、ゲーム開発は前年の2001年には始動しておりました。

2001年当時と言えば社名はまだスクウェア。本社は目黒のアルコタワーという場所にありました。目黒川沿いの建物で、桜の季節には絶好のお花見スポットでした。

 我らがサウンド室は9階に、そしてFFXIチームは17階に構えていたように記憶しています。(誰か間違っていたら訂正して下さい)

 リーダーミーティングというのが週一回あって、サウンドからは水田さん、効果音の矢島君、そして当時シンセオペレーターをしていた僕の3名が出席していました。

僕は水田さんが作曲したものを、山のようなシンセ群を使って(当時は24Uラックのタワーが2つあった!)マニピュレート→PS2に内蔵音源化→ミックスという業務がメインでしたが、ハードディスクを使った初のゲームということで、PS2の音のメモリー配分や鳴らし方といった仕様を、矢島君と一緒にメインプログラマーと交渉する役目も担っていました。

 音楽はストリーミング再生でという前提で進んでいたのですが、当時はネットワークの負荷がどのくらいになるのか、など事前に検証しきれない部分も多く、最終的には内蔵音源(このほうが、ハードにやさしいけれど音はどうしてもしょぼめになる)に落ち着いたんですね。

関係者各々と散々やりあったあげく、内蔵音源に決まった時は、すごく悔しかったのを憶えています(笑)

 写真は開発初期にメインのプランナーだった加藤さんが作ってくれた音楽の覚え書きです。こういうのを見ながらゲームの作曲ってスタートするのですよ。

FFXI_BGM案.JPG確かに音楽はストリーミングで!と書いてありますね^^CD1枚というのはサントラの事ではなくてデータサイズの事です。

 リーダーミーティングはFFXIチーム側には弘道さん、石井さん、成田賢さん、加藤さん、みやっちさん なんかがいたかなぁ、、(分かる人だけ分かって下さい) 司会はいつも成田さんがしていましたね。

 植松さんはFFXの作曲と平行していたので、後から合流するから、水田、岩崎で先に進めていてくれみたいな感じでした。

 水田さんと一緒に仕事をするのは初めてでした。

水田さんは大阪時代にパラサイトイブ2などで一人で内蔵音源化までされていたので、分業する以上は、僕が圧倒的なクオリティーを提供しなくては意味がないぞ!という思いで仕事に臨んだのを憶えてます。

幸いにして、FFXIの前哨戦としてテトラマスターというカードゲームの音楽を水田さんと一緒にすることになり、そこでお互いを知る事が出来ました。

 そしていよいよFFXIの開発開始!と言う時に、水田さんが僕の部屋にSTAR WARSCDを持って来ました。

 そして一言「これみたいな鳴り(ナリ)にして下さい。」

 げふっ

 無茶言うなぁと思うの半分、よっしゃやってやるぜ!究極の内蔵音源クオリティーをたたき出してやる!という思い半分でした。当時は機材の量は半端なく持っていましたが、今ほど便利な環境ではなかったので、1曲シンセオペレートして内蔵音源にしてミックスするという作業に平気でまるまる5日かかるなんてこともあり、よく会社に泊まりました。

オンラインゲームの音楽は今までのパッケージのゲームに比べて如何に長く、そして何度も何年にもわたって聴かれる事になるかということは想定していました。

 従来のような高域と低域を持ち上げて派手に鳴らすという手法は取らずに、何百回聴いても飽きないようなサウンドを目指そうと考えました。

 最初の曲はマウラだったかな。

水田さんはサンドリアのつもりで作曲して企画の加藤さんに持って行ったら、「全然違う。もっと大都市なんですよサンドリアは!」という話になった。

 加藤さんはクロノクロスをやられた直後だったので、初めて仕事をする水田さんとしては、少しクロノっぽいサウンドを意識してもっていった所もあったように記憶しています。

まだサンドリアが何かもみんな分からなかった。すべては文章と挿し絵位しかまだなかった。

僕的にはサンドリアといえば、バグパイプ。当時はシンセで使える(実用性がある)バグパイプの音色が限られていて、多くのクリエーターがJV1080(2080) の音を使ってたんですが、絶対にそれは使いたくなかった。でも、他にいい音源がないし、、、色々試行錯誤して、JV1080のバグパイプにEnsoniqMR-RackのバグパイプとKurzuweil K2500のバグパイプ、この3つのピッチを少しずつずらしてディチューンさせたものを混ぜてサンプリングしたように記憶しています。(わかる人だけ分かって下さいまし。)

要は何かしらオリジナリティーがある事をやりたかったんですね。

あらゆる曲でこんな感じの試みをしました。 

 ゲームのデバック(テストプレイ、バグチェック作業)が面白くてね。

オンラインゲームだから、ログインした状態で、みんなでテストしないとならない。成田さんが

「今日はグスタベルグに14時に全員で入って下さい」

とか号令をかけて、チーム全員でサーバーの負荷テストをするわけです。

 ある時バストゥークの港で飛空挺に乗るチェックをしていたら、人だけそこに何十人も残されたまま(空中に浮いたまま)飛空挺だけ飛んで行ってしまった。なんてこともありました。

そういえば植松さんともきっちり一緒に仕事をしたのはこの時が初めてでした。最初に植松さんから来た曲はロンフォール。植松さんは当時忙しくてFFXIの画面をなかなかログインして確認出来なかった。なので僕がロンフォールを歩き回った画像をビデオテープに録画して植松さんのところへ持っていった。「植松さん、ここ歩き回っている時に鳴る曲をお願いします!」そのせいか、植松さんから帰って来た曲の名前はaruki(歩き)になっていた(爆笑)

なので僕のパソコン上では ロンフォールは未だにarukiのままです。^^

そして並行して植松さんが少し調子を崩された。それで想定していた曲を担えなくなる可能性が出て来た。

さてどうしたものかと言う時に、植松さんが首謀して、水田さん、僕の3人である日谷岡さんを会議室に呼び出しました。

植松さん

「おーい谷岡クン。突然だけどものは相談だ!君FFXIの音楽なんか書いてみる気はないかい?」

谷岡さん

「え?え?えーーーーーっ!まじっすか!私が、私がFFの曲書いていいんですかー!」(いつもの調子で^^)

当時、大阪から出て来て間もなかった谷岡さんが大喜びだったのを憶えています。^^

こんないきさつがあって、谷岡さんがFFXIに合流してくれる事になったのでした。(そしてFFXI初期の開発後は谷岡さんと僕はFFCCへ流れることになります)

随分長くなってしまいましたので、二回に分けて。

 次回は僕のスクエニ社員生活15年における、最大の失敗談を書きたいと思います。もちろんFFXIがらみのお話です。

ではまた!

 

 

イケイケ動画
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    くるか?
                                くる...   まだか、まだこんのかー!! くるよー!!

                     皆の衆、来ましたぞーーーーーーーー!! くるよー     こーい こーい!

                                    こーい!   でーたー!!   キターーー!!  ギターーーーー!!  くるぞ!!!


                                                                                          クルルルルルー!!!!!!!!

                         おっしゃぁあああああああああああ!!!!! kunde---!!

                                        熱いよ 熱いよ!    ワイルドだぜぇ? ただの夏日だろっっw


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ぉぉ〜っと場内が少しざわめいて参りました!!
ハイ!という訳で、いよいよ公開でございます、が...

モンスタードラゴン “戦場BGM♪3” の特別編集版となっておりますので、
ゲーム中ですでにご存知の場合は、少し違っている部分に気付かれるかと思います。

まだ知りませーん!!

っという場合は、この機会にどこが違っているか? コチラで確認してみよう!
『モンスタードラゴン』公式サイト




それでは...例の「迷彩3号機」のおかげであり得ない映像を
収録できました!

そう、手乗りアフリカ象をイメージしてください。

そりゃありえねぇ〜!!w



sekito_zo2.JPG

 




サウンドスタッフが決死の覚悟で収録した極秘映像をどうぞ!!
『MONSTER x DRAGON レコーディング 潜入極秘映像』

 

今日は予定していた記事の確認が間にあわなかったのでここ最近の参加作品の情報まとめ。
まずは絶賛発売中のキングダムハーツ3D、コンポーザーインタビューが公開中
 
『キングダム ハーツ 3D』三者三様の魅力的な楽曲の秘密――『KH3D』インタビューその2

http://www.famitsu.com/news/201205/15014639.html

開発に参加しててもインタビューの時に知る事って意外に多いんですよね。
興味深い話満載です!見てみて下さい。
 
そして5/30にはFINAL FANTASY XIII-2オリジナル•サウンドトラック プラスが発売されます!!

http://www.square-enix.co.jp/music/sem/page/fabula/ff13-2/plus/

自称FFXIII-2の音楽に一番詳しいはずですが(開発してたので当然か。。。w)
そんな僕でも聞いた事のないレアトラックが沢山入ってます。
ヒストリアクロスもこんなバージョンがあったのか!と驚きました。
XIII-2オリジナル•サウンドトラックに入っているゲーム中の曲と聞き比べてみるのも開発の裏側を
知る感じで凄く面白いですよ。
近々、このサントラの更なる宣伝情報も公開します。お楽しみに!

個人的な情報としてはもうすぐ新録版「GO!GO!ブリキ大王!!」のお疲れさま会が開催予定です。
楽しそうな集まりになりそう!
以上河盛でした。

あ!!投稿ボタン押してからキングダム、インタビューの件、一歩違いで石元と記事と内容が被ってるのに気がついた。
けど今日は被ったままにしとこっとw
併せてお楽しみ下さい〜

先日のファミ通さんのインタビュー記事が後悔されました。

紙面で見逃した方は見てください。

http://www.famitsu.com/news/201205/15014639.html

レアな3人で音楽的な話や濃い話もしたんですが、それはまた次の機会に。

しかしモニターの関戸さん笑えるね〜。